強風のインディアンウェルス決勝は意外な面白さ

2009 BNP Paribas Open
Location: Indian Wells, U.S.A.
Category: ATP Masters 1000
Surface: Outdoor Hard
Draw Size: 96

Final
R. Nadal def. A. Murray, 6-1,6-2

インディアンウェルス決勝はロディックを退けたナダルとフェデラーを破ったマレーの対戦。
スコアの上でこそナダルの圧勝でしたが、意外なことにかなり楽しめました。

それは強風の存在によるもの。

激しく横風が吹き付け、映像からも明らかにボールが流されているのが分かります。
当然ながら二人のパフォーマンスも大きく影響を受けます。

特にマレーのプレーは風の影響を強く受け、打点を調整しながら終始受身のプレー。リスキーなショットは打てず、打ったとしてもミスになってしまうので仕方なくつないで様子を見る→ジリ貧、という感じでした。

サーブはエリアの真ん中あたりに浅く入り、セカンドサーブのスピードはしばしば70MPH(112km/h)そこそこという、アマチュア並みのスピードになっていました。

2ndセットの終盤は流れを変えるべく果敢にサーブ&ボレーを試みますが上手く行かず。最後まで風に翻弄されっぱなしでした。

対するナダルはマレーより上手く風に対処できていました。
普段しないようなミスも多少出ましたが、甘い球に対してはきっちりとハードヒットできていました。

明らかにナダル優勢が序盤から見てとれたため、勝負の行方という意味では面白くない試合でした。

風に泣かされたマレーですが、そこはナダルも同条件ですので、単純にナダルの方が強かったということでしょう。ますます怪物じみてきました。

余談ですが、ナダルは悪条件に強いですね。クレーコートとは対極のサーフェスであるウィンブルドンでも強いのは、芝というサーフェスが特殊(=悪条件)でほとんどのプレーヤーが苦手だということが大きく関係していると思います。つまり普通の選手は芝になるとコートの速さやイレギュラーが原因でパフォーマンスが落ちるところが、ナダルはあまりパフォーマンスが落ちないのです。
今日の試合で強風にも強そうだということが分かりました。
そういう意味で「ノーマルな条件」だった今年の全豪を勝ったことは、私の中ではウィンブルドン以上に衝撃的でした。

話を戻します。ではなぜそんな悪条件だった今日の試合が意外と面白かったのか?

それは風に苦労したとは言えマレーもナダルもラリーは続けることができたから。
風に流された球を無理やり強打して凡ミス、という試合ではなく、ナダルもマレーも我慢をしてラリーを続けながら勝負所を探る面白いラリーが多かったたからです。

いつものようなスピーディな、コーナーを突くショットの応酬は見られませんでしたが、その代わりに非常に味のあるラリーでした。

私のレベルのアマチュアプレイヤーにとっては、なんの迷いもなくスムーズにハードヒットできるショットなんて試合中に何本もありません。

ほとんどの場合は相手の球に翻弄され、打点を誤まり、また打点に入るのが遅れ、そのズレを修正しながら打っています。
スピンはスピードボールをコート内に収めるためというよりは単にコントロールの調整に使っている感じです。

打てそうで打てない球を、「強打しようかどうしようか」「コーナーを狙うか安全に返すか」そんな迷いが常に頭にありながらラリーを組み立てるわけです。

調子が良いとあまり考えずに思うように入ることもありますが、強い選手に当たってしまうと自分のプレーをさせてくれません。そんな制限がある中、自分の持ち駒と相手の持ち駒を計算し、その時点で最も期待値の高い戦略を考える、そんな詰将棋のような面白さがテニスにはあります。

今日の試合はある意味そのような状況に近く(特にマレー)、間があって迷いながら、調節しながら、それでも必死にラリーを組み立てる姿が非常に味のあるものに思えました。

思えば昔のテニスはプロでもこのような味があるテニスだった気がします。最近はスライスでのアプローチショットからの組み立てなんてほとんど見なくなりました。

最近のスピーディでダイナミックなテニスにも魅了されますが、時にはこんな味のあるテニスを見るのもいいモノだな、と思える試合でした。

現在でもシニアツアーではこのような味のあるプレーを見ることができます。テニスの強さでは現役にはとても敵いませんが、勝負の駆け引きやラリーの組み立ては一見の価値があります。

東京で昔やっていたNTTデータチャンピオンシップスが懐かしくなってきました。

10 件のコメント

  • ここ日本と同様、インディアンウェルズも風が凄かったですね。

    錦織選手ですが「6週間はリハビリ」に専念し、全仏オープンに間に合わせることが目標とありました。
    http://news.tennis365.net/news/today/200903/16210.html

    ここは焦らずじっくりと治して欲しいです。
    頑張れ、圭!

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  • OBM-GOさん、了解!
    我慢我慢、今は我慢ですぞ。
    錦織もファンも。
    いつまでも待ちますぞ!

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  • 6週間よりその先のほうがずっと長いですから、
    きっと最善の選択でしょう。
    復活の日を楽しみに待ってますよ! 

      引用  返信

  • OBM-GOさん、貴重な情報、ありがとうございます。
    やっと、IMGからの正式アナウンスがありましたね。
    (公式HPはどうなっているんだ!)

    以下、私の推定に基づく参考情報を記します。

    1.5/8デ杯への出場の可能性は0ではない。
     共同通信社は、「5月デ杯への出場は絶望的」と伝えていますが、
    IMGとしては「5/25全仏出場をターゲットにデ杯の前の週までは
    テニスをさせない」と言っているだけなので、回復状況によって
    は、同じクレーのウズベキスタン戦を調整の皮切りとする可能性は
    あると思います。

    2.全英ダイレクトインの可能性はまだある。
    “錦織圭、マイアミ欠場”に対する私のレスポンスで、「5/8デ杯
    以降から復帰の場合は、全英は予選からの出場」とコメントした
    ばかりですが、想定カットオフRK(昨年114位)に当たるATPポイント
    の今後の下降推移(1/5付866pt→3/23付753pt)によっては、仮に
    全仏からの復帰であっても、全英にダイレクトインできる(5/11エント
    リー時点で錦織715pt)可能性がある(ドタ勘で半々?)ことが分かり
    ました。

     以上、外れることも充分にありますが、参考情報でした。

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  • OBM-GOさん、情報早いです、ありがとうございます。
    今朝地元紙を開いて飛び起きました。

    錦織選手が帰ってくるのを皆さんとともに待ってます。

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  • OBM-GOさん
    情報ありがとうございます。
    やっと治療に専念する決断に至りましたか。ホッとしました。
    体力強化できるチャンス到来!がんばれ、圭君!

    コリコリさん
    いつも鋭い分析ありがとうございます。
    ウンウン、復帰戦はデ杯のシナリオは可能性大ですね。
    去年の北京オリンピック→USオープンの流れと一緒ですぞ!!
    なんか勝手に想像しているだけで、楽しみになってきました。

      引用  返信

  • おはです。

    本当に風が強かったですよね。
    ナダルのウェアーがかなりブンブンしていました。

    圭君はきちんと治してほしいです。
    ファンとしては寂しいですけど我慢です。

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  • 決勝戦1stセットのみ見ました。
    ナダルのネットプレーのうまさに驚きました。
    いつの間にこんなことが、出来るようになったんだ?

    マレーは、「もうちょっと本気で打たんかい!?」というストロークと足が魅力ですが、風もあって先にミスが出ていましたね。
    この2人の対戦は、この先も非常に楽しみです。
    また、味のあるラリーを見せて欲しいものです。

    OBM-GOさん、コリコリさん、ありがとうございます。
    じっくり治して、いつの日かマレーと戦う錦織が見たいです。

      引用  返信

  • ナダルロデのSFと決勝を拝見しましたがどちらも風が凄かったですね。テレビ画面から見てもボールが風の影響で大きくブレる様がわかりました。思わず「許〇剛漫画かよ」とツッコまざるをえませんでした。その強風の中でも自分を見失わずにプレーができるナダル、うーむほんとにバケもんじみてきましたですな。
    一方の錦織も昨年のチリッチ戦、全豪のメルツァー戦とも風で苦しみました。こういう悪条件の中でも相手を上まわるプレーをしていくのも今後の課題でしょうね、まあこればかりは試合を重ねて経験値を積んでいくしかないんでしょうか。

    さてこれから6週間どうやって暇をつぶしましょうかね、ほほほ

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  • 僕は試合を見ていなく、単にナダルの圧勝だと思ってたので、この記事をよみながら「へ~」と頭の中で連発してました。ww

    風にも対応できるナダルはもう無敵かもしれないですね^^;;

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。