2025デ杯ファイナル 予選1回戦 vs. イギリス 1日目レビュー

デ杯ファイナル予選1回戦 日本vsイギリスに行ってきました。場所は兵庫県三木市・ブルボンビーンズドーム。市街地から遠く、アクセスは悪いのですがとてもいい会場だと思います。

客席数は1500ほどしかないため、今回はかなりのチケット争奪戦だったと思います。その意味では有明でやってもらった方がたくさんの人に見てもらえたかもしれませんが、関西に錦織がやってきたのは2012年のデ杯クロアチア戦以来でしたので、その点では関西のテニスファンの皆様にも良い機会になったのかなと思います。初めて錦織や西岡を生で見たファンもたくさんいらっしゃったのではないでしょうか。

さて今回のイギリス戦は、ランキングNo.1とNo.2(西岡、錦織)を揃えた日本に対し、ランキングNo.1、No.2(ドレイパー、ノリー)を欠いたイギリスという布陣となり、ハリス(129位)に西岡、錦織とも勝利し、ファーンリー(77位)に西岡か錦織のどちらかが勝って3勝という青写真だったと思います。

またダブルスでも、実力的には圧倒的に優位なイギリスペアに綿貫に初出場の柚木とビッグサーバー2枚を揃えました。リザーブもビッグサーバーであり単複どちらも行ける内山で、戦略的に練られた選手選択だったと思います。

しかしこの隙のない布陣とは裏腹に、結果を先に言ってしまうと1勝2敗で西岡vsファーンリー、しかもファーンリーは前日に錦織を完封しているという非常にプレッシャーのかかる状況に追い込まれました。最終的には3勝2敗で勝利したものの、これがデ杯の怖さであり組み合わせの妙です。つまり初日は両国のNo.1とNo.2の対決ですので、実力が接近した国同士の対戦であれば1勝1敗になることが多く、ダブルスを勝った方が2勝1敗になり相手国にプレッシャーをかけることができる、というわけです。

さてそんなヒリヒリする展開となった今回の対戦を振り返ってみましょう。

第1試合 西岡 def. ハリス, 7-5,6-1

出だしは西岡に緊張もあったのか、DF2本で第3ゲームをブレイクされます。ハリスは逆にミスがなく素晴らしいプレー。次の西岡のサービスゲームも0-40となり大ピンチを迎えますが、ここでファーストサーブを厳しく3本入れて挽回。このゲームを取られていたら1stセットはかなり厳しかっただけに大きなゲームでした。

続く第6ゲームは長いゲームとなり、今度は粘りのディフェンスからのカウンターでブレイク。最後は雄叫びと共にフォアのダウンザラインを決めました。この2ゲームが試合の流れを決定付け、緊張が取れて動きが良くなった西岡ペースで試合は進み、終わってみれば7-5,6-1の完勝となりました。
ハリスも3-1、0-40から1本で良いのでビッグプレーが出れば勝負の行方はわからなかったと思うのですが、そこで弱気にならなかった西岡を褒めるべきでしょう。まずは日本チームが幸先の良い1勝をあげました。

第2試合 ファーンリー def. 錦織圭, 6-3,6-3

「日本をデ杯ファイナル8に引き上げる」
強い気持ちを持って今大会に参加した錦織でしたが、この日は不調。特に3球目攻め球のミスが響き、出だしからつまずきます。
攻撃的なプレーではあるものの、攻め球、特に3球目のミスが多く第3ゲームで早くもブレイクを喫します。
続く第4ゲームでは0-40のチャンスを「アレ!」の声と共に迎えたものの(フランス人か?)、攻めたリターンがわずかにアウトすると、サーブに押されキープを許しました。
振り返ればここは非常に痛いゲームでした。競り合いに持ち込めば高い確率でなんとかする錦織ですから、ここで離されずについていきたかったところです。

結局、トータルで9本の3球目ミスを犯した錦織は3-6で1stセットを落としました。
ただ、プレーしているのは「錦織」ですから、2ndセットからの錦織劇場を期待したのは私だけではなかったでしょう。
どこかで修正してくれることを信じていました。

すると1stセット中盤からサーブをあまり返せず、3回連続で簡単にキープを許す流れが続く中、2ndセット第3セットでようやくサーブに触れるようになるとリターンが冴えブレイク!
ついに錦織劇場の開幕か!と会場の盛り上がりも最高の状態になったのですが、なんとここからが続かず・・・。
ミスがなくならない状態ではファーンリーにプレッシャーのかからない状態での強打を許してしまい、3-6,3-6という錦織にとっては珍しい、不本意な敗戦となってしまいました。

直接的な敗因は、やはりトータル13本を数えた(鼻血調べ)、サーブの次の3球目のミスです。単純な攻めのミスもあれば、攻めるべきと思えない球を無理して強打する場面もありました。
こういった症状は初めてではありません。ただ、錦織はそのまま打ち続けて最後にはボールを入れてくるか、もしくは手遅れになる前にじっくりラリーする方針に変え、多くの試合を勝ち抜いてきました。今回は前者を選択してそのまま修正が効かなかったパターンでした。

いくら錦織といえども100%、逆転できるわけではありません。相手がチャンスを与えてくれないこともあります。
今回のファーンリーがまさにそうでした。前回対戦時よりずっと手強く、まずビッグサーブを常に入れてきたことと、次に錦織の強打をまず1本返し、錦織のミスを誘ってきました。すると攻撃力もどんどん上がっていったため、錦織が修正するチャンスそのものが少なくなってしまいました。

正直あまり良い負け方ではありませんでしたが、何ヶ月もずっと調子が良かったので、時にはこういう試合もあると思って早く気持ちを切り替えるしかありません。大会を勝ち上がるためには連戦に耐えるフィジカルが必要で、そのために速攻を極めるプレイスタイルに取り組んでいる錦織です。それが上手くいかない時、それでも打ち続けてその中で修正していくか、早めに見切りをつけ確実なプレーに一旦戻すか、判断が難しいところです。今回は本人曰く、焦りもあり打ち急いでしまった感があります。私としてはあまり速攻にこだわらず急がば回れでじっくりラリーも混ぜた方が、スコアが悪くなり逆転にエネルギーを要してしまうよりはトータルで省エネに繋がるのではと常々思っているところです。

錦織の敗戦により1勝1敗となり、イギリスにとってはこれでダブルスを取り西岡にプレッシャーをかけるという計画通りの展開となったと思います。
また錦織の調子にも不安が残る1日目の結末となってしまいました。

ただ、チームの雰囲気はよく、2試合とも試合中は一丸となって応援していましたし、プレーする西岡、錦織も陣営と常にアイコンタクトを取り、自分を鼓舞していました。
ダブルス含め全員、2日目の試合を勝つつもりでいたと思います。1敗しても次があるのが団体戦の良いところ。錦織は悔しくてたまらなかったでしょうが、翌日に向けて闘志を燃やしていたはずです。

2日目のレビューに続きます。

15 件のコメント

  • 感動,感涙の熱い戦いの後,それぞれ個人戦へ旅立って行く…。日本チームの皆さんの活躍を祈ります。
    この尋常で無いプレッシャーと仲間との繋がり、次の戦いに向けて得るものが沢山あったと思います。ここ半年で一番悪い位…という本人コメントの試合を生観戦した訳で、ちょっと複雑ですが敗戦の苦しい試合でも神のオーラは確かにあった,と思います。

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  • デビスカップは今まで2回観に行きました
    でも錦織圭の出る試合はなかなかチケットがゲットできない
    皆様どうやってゲットしてるのですか
    観に行った2回とも相手国はフランス、ウクライナでした

    ウクライナ戦で、ずっとウクライナって叫びながら太鼓叩いてたおじさん
    今頃どうしてるかな
    元気で生きてるかな

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  • 錦織も西岡もダラスに着いたでしょうか。みんなで喜んで余韻に浸かる時間もないのね(^_^;)
    振り返ると本当にいい形で終わることができたなと思います。
    錦織の心境を思うと、勝つべき(とみんなが思っている)試合に負け、西岡の奮闘で五分まで戻し、自分が勝負を決める役回り。普通なら勝てると見込める相手かもしれないけど、前日に半年の間で一番良くない試合(本人の言葉)をして、プレッシャーはいかほどかと。一日であんなに修正できるものですか?
    焦って攻め急ぎの課題は、素人が見ていても分かるくらい意識して戦ってましたね。うわあ!絶対に勝つという意思が伝わってくるよぉー!にしこりぃ(>_<。) そんな気持ちで応援してました。驚きはサーブですよ。半日くらいの練習でどうして修正できるんだろ。1stサーブポイント獲得率40%台から80%台に上げたのは何したんだろ? ちょっと確認したと言ってたけど、その修正力がすごいな。もちろん相手も違う数字だけど、このくらい良ければファンリーとも、もっといい試合ができたと思わせるできに感じました。
    短時間で自信を取り戻せたのが良かったともいってましたが、昨日の試合の結果次第では、今後の試合をも左右しかねない大事な大事な勝利だったと思います。
    負けてたら…………(可能性は限りなく低いとしても)どれだけのものが失われたか😢いやあ、ほんとにドキドキでした。
    素晴らしい勝利でホントによかったです。
    西岡にも感謝感謝🙏
    2人ともダラスでがんばって💪(とはいえ両者とも1回戦からタフな相手💦)

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  • ハリス戦第2セットの第5ゲームが素晴らしかったですね!0-40でBP握られてからのラリー、頭脳的な組立てで技術を駆使してウィナー連発で5ポイント連取!そこだけ繰り返し録画再生して見てました。何度見てもシビレます。ほんと、神が降臨してました!

    勝利が決まった瞬間、ヨッシーがベンチから飛び出してきて錦織に抱きついたシーン、その後、日本チームと抱き合って頭なでられ肩叩かれモミクチャ気味にねぎらわれたシーンには泣けました…勝利の歓喜をみんなで讃え合い分かち合えて、個人戦にはない団体戦ならではの感動がありました。みんな、嬉しかっただろうなあ!
    特に錦織は、前日の手痛い敗戦を思い、ヨッシーの試合中ロッカールームで”苦しいくらい苦しかった”(死ぬほど苦しかった)のも報われたのでは?
    重圧に耐え、勝利への執念を静かに熱く燃やして戦っていた姿、神々しかったですねえ…

    西岡も錦織もすぐにダラスに飛ばなければいけないタイトなスケジュール、よくぞデ杯に参加してくれたもんです。日本チームをファイナル進出へ!という強い思いがあったとか。
    日本からアメリカへの移動は時差も大きいし、連戦で疲労も大きいだろうし、大変だろうになあ。
    二人とも今後の個人戦の長丁場、どうか怪我のないように気をつけて健康を保ちつつ戦い抜いてほしいと思います。これからも熱く応援続けていきます。

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  • 久しぶりのビーンズドーム。
    カルロビッチのサーブに完敗したことや、その時の添田君の奮闘を思い出しながら、デ杯の独特の空気感にいつもと違う錦織の様子、そして錦織を引き戻してくれたヨッシーの奮闘に感動し、チーム全員の一体感に胸アツでした。リセールチケットが奇跡的に買えたのも超ラッキーでした。本当に行けてよかった。
    あの状態から静かに勝利してくれた錦織、苦しかっただろうな!本当にありがとう‼️です。
    おまけに、、添田キャプテンのカーリーロングヘアーは怖いくらいのオーラを放ってました。

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  • 内田暁さんの記事を読んできてください。ステキ😍
    デ杯の大変さを上回る代表チーム愛🔥が監督を筆頭に全てのメンバー
    (サポートするスタッフ含め)で共有している様子が涙もの😭
    錦織のベテランらしい成長ぶりも嬉しい。
    おじさんもがんばってるって、錦織らしい冗談も、絶対そんなふうに
    思ってない笑 若者に負けないくらい成長株だもの✌️
    (前述で1試合目1stサーブポイント獲得率は40%台ではなく50%台
    でした😅) サーブの修正は腕を振り抜くようにしたと書いてありました。
    確かに焦りや緊張した局面では腕が縮こまるというのは想像できる。
    ダラス前にそこを確認できたのもよかった😃

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  • 下団さん、いつもありがとうございます😊
    今回も声、聞こえましたね😅
    いつもいつもいい記事ですよね。。。
    選手に寄り添っているからなあ(´-`).。oO

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  • 下団さん あけびさん
    内田暁さんの記事読みました。

    内田さんの記事はいつも素晴らしくて、感動しますね。

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  • 錦織選手も明言されているチームとしての目標であるファイナルまであと1勝、その大事な戦いになる次戦はホームでドイツ🇩🇪との対戦です。

    この対戦の大きなカギの1つとなるのは「サーシャ選手が参戦するか否か」だと思いますが、ここ数年の9月辺りの参戦傾向などを見ると個人的には参戦する確率は50%弱かなぁとは思っていますが果たしてどうなるか・・・?🤔

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  • ウクレリアンさん、同館です!!凄く凄く!!
    私も何回もみてます。本当にしびれましたね。次のダラスは期待したいと思います。

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  • ダラス500で日本人選手の初戦をライブで見られる方々は「変な人たち」に確定。

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  • kiさん、30-40で相手の深いクロスをコート外から体勢崩しながら打ち返したBHDTLウィナー、その前のラリー2本もすごかったけれど、このスーパーウィナーはさらにすさまじかったですね。ここ落としてたらブレークされたわけで、試合はどうなっていたかわからない瀬戸際に、このプレー!神〜!!!

    明日はダラス、錦織圭の試合を次々と見られて、どんなに幸せなことか!「変な人たち」とずっと呼ばれ続けていいんです!

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  • 団長さん、デ杯1日目の丁寧な分析をありがとうございます。
    錦織圭は速攻を極めるプレイスタイルに取り組んでいるが、それが上手くいかない場合にどうするか?という課題があるってことですよね。
    特に良いサーブや良いリターンを起点にできない時の速攻は難度が高いと思うのですが、それに加えて対戦相手が上手い選手の場合さらに難度は高まる。そういう時にどうするか?

    団長さんおっしゃるように、急がば回れでじっくりラリーも混ぜた方がむしろ省エネになると思えるんですが、速攻を続けつつその中で修正しようとしているように思えることがあります。何か試行錯誤していることがあるんでしょうか?

    デ杯2日目のレビューも楽しみにしています。ご多忙中ご無理ない範囲でお書きください。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。