楽天オープン第2日観戦記 その3:愛しのサントロ師匠の試合に感激

楽天オープン第2日目、10月6日の観戦レポートその3です。

長文すぎて読んでもらえないかもしれませんが、この試合だけは省略するわけにはいきませんw 自己満足の世界です。

この日は当初、センターコートでの男子5試合+伊達さんの試合に加えて、1&2番コートで男子4試合が予定されていました。

しかしあいにくの雨のせいで、1&2番コートの4試合はナショナルトレーニングセンターなどでの無観客試合になるのではないか、ともっぱらの噂でした。

それでも、過去の経験では一部の試合はセンターコートに移動になったりしていたので、サントロ師匠の試合がセンターに移動してくれることを祈っていました。

そして昼過ぎ、唯一サントロ師匠の試合だけがセンターコートに移動してくることに決まり、歓喜の声を上げたのでした。

初来日のサントロ師匠ですが、師匠の試合を生で見たのは、実は初めてではありません。

2004年の全仏ダブルス準決勝、あのブライアンズを破った試合をこの目で見たのです!・・・・・師匠は豆粒大でしたが・・・。

このときの師匠&ロドラペアはもう上機嫌で、試合後、身に付けたものを脱ぎ捨てては観客席に投げ入れていました。

そういうわけで初師匠ではないものの、シングルスは初めて、近くで見るのも初めてのサントロ師匠に、試合前からテンションあがりっぱなしです。

サインがもらえる位置で観戦していた私でしたが、それまでの6試合では一回もサインをもらいにいきませんでした。しかしこの試合だけは別。最初からサイン貰う気満々した。

対戦相手はカザフスタンのゴルベフ。69位の選手ですが、ショットが強烈です。

回り込んでのフォアのダウンザラインが火の出るよう。

そしてこの選手、まるでソフトテニスのように、バックハンドをフォアハンドと同じ面で器用にさばくのです。いまどんどんランキングを上げてきている選手

またもや掘り出しものの中堅選手を見つけてしまいました。とはいえ、サンクトペテルブルグで決勝に進出したりしていましたから、知っている人は知っている選手だと思います。

師匠のテニスは、分かってはいたけど衝撃的でした。

フォアハンドのスライスのコントロールは何ですかあれは。

横から見ると、軌道が一定なんですよ。

それから、なんであんなに「間」があるんですか。

ボールが飛んでくるまでの時間は万人に平等なのに、サントロ師匠のまわりだけ時間の進みが遅いみたい。

追いつきさえすれば、相手のどんな強打でも吸収してしまう感じです。

サーブは速さこそ並ですが、コントロール異常。

ネットプレイのタッチも異常。

とにかく「ボールをコントロールするとはこういうことだ」、といわんばかりのテニスでした。

バックハンドはライジングが上手く、相手の球をそっくりそのまま返す感じ。おまえは鏡かwww!

このテニスは何なのだろう・・・うーん・・・とずっと首をかしげていましたが、なんとか分析。

まずはボールの軌道認識が早い。

どのくらいのスピードでどこに落ちるか、どんな跳ね方をするか、認識が早いです。

その結果、まったく無駄なく打点に入ります。特にバックハンドの通常ショットは、ほぼ最短距離を通って入ります。

フォアハンドは逆に、下がりながらスライスで打つことも多いです。前に踏み込んでいくスライスではなく、横に踏み込んで懐を作り、コントロールします。

普通の人が同じ打ち方をすると、手打ちになってボールが浮いてしまいそうなものですが、師匠のスライスはきっちりボールを抑え込んでいます。

次にテニスに対するコンセプトそのものが優れています。

「もう、私は組み立てでポイントを取るよ!ボールの威力は適当にあればいいよ!」

と言わんばかりのテニスなのです。はい、わかりにくいですね・・・。

単純につなぐだけ、ミス待ちのテニスではないのです。攻撃もします。

攻撃は主にネットプレイです。前に出れる球を探しています。前に出たら、なぜか抜かれません。読みも抜群です。

相手がパスを打つぎりぎりまで、あの大きな目で見つめている感じです。予測もばっちり。

自分は無理せず、相手に無理させる、そんなテニスです。

技術としては、ボールをラケットフェイスの真ん中でとらえる技術が突出しています。

これは全プロの中でも上位です。

フェデラーなどでも、手首を使いすぎてフレームショットにしてしまうことが結構ありますが、サントロにそれはありません。

打ちこまれて体をよじって当てるだけで返す時も、ちゃんとフェイスの真ん中でボールを捕らえています。

それがあのコントロールの良さにつながっています。

フットワークの良さも見逃せません。

ドタバタしているように見えますが、よく動いています。

サッカーで言う「献身的な守備」という感じです。なぜかこの言葉が頭に思い浮かびます。テニスであまり使う表現じゃないですが、この言葉がぴったりです。

打点への入り方は、最短距離(ボールの軌道に対してほぼ直角)、真横、後ろに下がってからの回り込みの3種類をうまく使い分けています。要するに丁寧なんです。

現代テニスでは、後ろに下げられてしまうと苦しくなるものですが、師匠の場合はコントロールがいいのと、読めないのとでなかなか相手もリズムよく攻めさせてもらえないようです。

結果として攻めるべき球だったのに見逃してしまった、そんな場面も結構ありました。

そして、ちょっと威力のある球に対してはすかさず下がりますが、それでいて打つ時の態勢は前向きのベクトルを上手く保持しています。

相手としては、自分の球がどのくらい利いているのか、非常に分かりにくい選手だと思います。

逆に、大したことない球でもわざと大げさに取っているようにしている節もあるので、利いているように見えて利いていないということもあり、ますます相手は混乱します。

この試合も1stセット序盤、ゴルベフは完全に師匠の術中にはまってしまい、根負けしてミスを繰り返していました。

師匠はサービスゲームはネットプレイ交えて危なげなくキープ、リターンゲームはしぶとく返してゴルベフのイライラを誘うことに成功していました。

しかし1stセットも終盤に入って、師匠の球に慣れてきたのかゴルベフのストロークが決まり始めます。師匠も抵抗しますがタイブレークを5-7で押し切られてしまいます。

2ndセットに入り完全にペースを取り戻したゴルベフは、ものすごいバックハンドのストレートでエースを連発します。

師匠は苦しいながらもなんとかキープしてついていきます。

そしてコートチェンジのときにはボールボーイになんとコーラを持ってこさせますwww 500mlを2本。

試合中にコーラがぶ飲みするアスリートを初めて見ましたwww。ゲップが出て困らないのでしょうか・・・。

4-4でバックハンドウィナーを3本取られ、5-5でも0-40の大ピンチ(ここは本当に負けるかと思った・・・)を迎えたサントロ師匠でしたが、

そこをコーラパワーで何とか切り抜けると、

気合のパッシングショットを見せたサントロ師匠が2度目のタイブレークを7-2で取って勝負はファイナルセットへ。

会場はすでにサントロ大応援団と化しています。

10時を過ぎているので観客数は減りましたが、ほとんどがサントロの応援で妙な一体感がありました。

あちこちから「Allez, Fabrice !」の声がかかります。

もちろん私も、何回も大声で応援しました。

しかしやや疲れが見えるサントロ師匠、0-2とリードされてまたもやピンチです。顔も赤くなってきて、相当きつい様子。

しかしここからがマジシャンの本領発揮。

本当に手を変え品を変え、ゴルベフのテニスを崩しにかかります。もう一回気合を入れなおして、コートカバリングも一層頑張るようになりました。

それが実を結び、ゴルベフのボレーミスを誘ってブレイクバックすると、2-2からの第5ゲームはネットプレイを駆使して再びブレークします。

ブレークとなったポイントでの師匠のボレーがアウトだとクレームをつけるゴルベフ。激しい抗議です。しかし当然認められるわけもなく、観客も誰も味方になってくれるものがおらず、孤立してしまいます。

フランスで同じことをしたら大ブーイングが起きるような状況でしたが、そこはさすが日本。大きな混乱もなく試合は再開されますが、もうゴルベフの精神状態は元には戻りませんでした。

あとは師匠が本当にスイスイをポイントを重ね、そのまま6-7(5), 7-6(2), 6-2のスコアで勝利!

ちょっとゴルベフはかわいそうでしたが、師匠は最初で最後の日本だから、今回は許してね。

あの気持ちのよい強打は一見の価値あり。また日本に来てほしいところです。

試合後はすごいサイン攻め。

この機会を逃したら、もう二度と師匠のサインが貰えない可能性が高いですからみんな必死です。

私も必死でした。

「押さないでください!」の声多数。

私の前の太めの男性、私は押してないにも関わらず、スペース確保のために思いっきりヒップアタックしてきます。

ちょっと混乱気味でしたが、サントロは上機嫌。

それはそうでしょう。いい内容で買って、観客もみんな味方だったのですから。

こんなにファンがいるなら、もっと早く来るんだったな

そう思ったかどうかは分かりませんが、きっとサントロも応援に喜んでくれたと思います。

私はとにかく師匠が日本に来てくれたのがうれしかったので、シモンのときと同様、

Merci d’etre venu ! Suis vraiment ravi ! (来てくれてありがとう!私は本当にうれしい!)

と声をかけると

Merci a vous ! (ありがとう!)

と答えてくれ、優先的にサインしてくれました。ああああ、一生の記念じゃああああああ

と、この日は14時間も観戦しましたが、最後に最高の試合が見れて幸せでした。

サントロ師匠、ありがとう! そしてお疲れ様でした!


9 件のコメント

  • 同じく見ました!見ました!
    サントロを見に平日3日間休んだのですから!
    NTCに移ってら、、、って事を考えたら貧血ものでしたが
    赤い糸!って皆が思ったんだろうなぁ。。。
    なんせ素晴らしかったです。勝った試合も負けた試合も見れて大満足です。私も2006の上海で豆のようなお姿を拝んでいるのですが。。。
    試合が終わってすっごい遅い夕飯を食べてホテルに戻るとなんと!
    ロビーでくつろぐサントロ師匠が!!!!!
    お土産にチョコレートを渡してサインを頂き2ショットも頂いて
    冥土の土産クラスです!
    フェデラーが来なくて3日間位寝込みましたが逆に真のテニスファンの祭典(特に平日)でしたね~。
    来年は誰が来るのでしょう。。。
    ナダル来てくれないかしら。。。

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  • サントロ選手があの試合中にコーラーを飲んでいたとは驚きです。
    面白い観戦記ありがとうございました!

      引用  返信

  • はじめまして!いつも楽しく拝見させていただいてます。

    いつもは見ているだけでしたが、師匠の試合について書かれてはコメントしないわけにはいきません。僕も1回戦を見に行ってまして師匠のプレーに本当に魅了されました。会場の雰囲気もすごくよかったですよね。というか、やはりみんなサントロ師匠が大好きなんだなーって思いました。

    ただ、悔やまれるのはその後用事があったため、10時頃会場を後にしたことです(泣)。最後まで見たかった・・・

    最後まで見れた人たちがとってもうらやましかったです。。。

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  • このブログの副題は本日より

    「サントロ師匠を貧血になるまで応援し続けるブログ」

    になりました。

    と、言いたくなるような、熱いコメントばかりですね。
    サントロ師匠、人気者。

      引用  返信

  • 圭すけさん

    最後まで見れなくて残念でしたね。
    でも、本当にいい記念になりましたね。お互いに。
    引退してほしくないなあ。

      引用  返信

  • みなさんが師匠師匠とあがめるサントロとはいったいどんな
    テニスをする人なのか?
    興味津々でこの日の試合を見ました。

    テクニックの詳しいところは私は解りませんが、
    サーブのリターンがとにかくうまい!
    これは取れそうもないだろう、と思うような弾丸サーブでも
    起用に返していました。

    そして、相手のボールの勢いをうまく利用して
    リターンするのが上手。
    おっしゃるところの、必殺技!鏡返し?!

    本当に、記事を読みながら思い返すと
    どんなボールでもとってしまって
    しかもリターン一辺倒にならず
    攻撃もする。
    つまりよく動くテニスでした。

    2セット目以降は有明のセンターコートは
    “サントロ祭り”状態でしたね。

    師匠がミスしても
    師匠に「アレっ!ファブリス!!」の声がかかり
    相手がミスすると拍手。
    相手がウィナーとっても
    シーン。
    師匠がポイント取ったらいちいち拍手。

    そりゃ相手選手がラケット踏んずけて怒るのも
    無理はない。。。
    どこかでキレて試合放棄して帰ってしまうのでは?
    と途中で心配になりました。

    いやぁ~なんか、今回のジャパンオープンの中で一番楽しんだ、楽しめた試合だったなぁ~。

    『こんなにファンがいるなら、もっと早く来るんだったな』

    絶対思ってますよ、サントロ師匠。

    あぁ、もう一回みたいですー。

    あの不思議なテクニックの数々。

      引用  返信

  • 師匠のすごさって何だろう・・・と言葉にできないものを抱えていましたが、

    >相手のどんな強打でも吸収してしまう感じ

    まさにこれにつきるな、と思いました。
    なんというか、相手選手と同じ競技をしてるように見えないんですよね。

    ここまで丁寧に振り返っていただいて、あの試合の興奮がよみがえってきます。

    どうもありがとうございます!

      引用  返信

  • 伊達さんのライジングショットに代表されるような早いテンポで返して相手の時間を奪う というのと逆で師匠は「間」を作って相手のテンポをずらしているのかもしれませんね。
    あのちょっとした間が相手に「どっちに打ってくるんだ?」と考えさせて、コントロールの良さと相まって簡単に攻めさせない師匠の恐ろしいテクニックだと気付きました。

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。