ボレーは振るべきか?振らないべきか?(テニスの物理)

錦織の復帰が延期になりましたので、またしばらく私のヨタ話にお付き合いしていただくことになりましたw

今日はボレーは振るべきか?振らないべきか?について考えます。

ボレーはストロークと違い、打つまでの時間的余裕がありません。

ストロークのような大きなテイクバックとスイングをしていては、間に合いません。

そこで初心者に対しては、

「ボレーは振るな!」

というアドバイスが必ずと言っていいほどかけられます。

まずは最初のステップとして、ボレーには大きなテイクバックは禁物なことを理解させるためには重要なアドバイスだと思います。

間に合わない、という他にも、大きなテイクバックはムチャ振りにつながり、ボールをコントロールすることができなくなる弊害があります。

しかしながら、当てるだけではいいボレーが行かないのも事実です。

上級者はテイクバックはコンパクトですが、よく見ると意外とスイングしてボレーしていたりします。

小さいスイングだとしても、スイングスピードはしっかり出ているはずです。なぜなら、そうでないと良いボールが行かないからです。

そう、ボレーはスイングして良いのです(どうスイングするかが問題・・・)。

その理由は、私の大好きな物理法則です。

下に置いたストリング面(両端が固定されている)に対して、1mの高さからボールを落としたら約85cmの高さまで跳ね返ります。

つまり、反発係数は0.85です。

しかし、スイングを伴なう実際のプレーにおいてはこんなに高い数値にはなりません。

例えば時速100km/hで飛んで来た球に対して、時速50km/hのスイングスピードで打ち返したとします。

ストリングの反発係数が0.85のままだとしたら、100km/hの球は85km/hで跳ね返され、それに50km/hのスイングスピードがプラスされますから、

85+50=135 km/h

で飛んでいくはずですが、実際には例えば 100km/h だったりするのです。

この場合、

100km/h × 0.5 + 50km/h = 100km/h

と分解されます。この 0.5 は「見かけの反発係数」と呼ばれます。単純に、実測値から逆算しただけのものです。

ストリング本来の反発係数が0.85なのに対して、飛んでくるボールやスイングのスピードによってこの逆算した「見かけの反発係数」の値は変わってきます。

その値はスイングスピードによりますが、だいたい0.2~0.5の範囲に収まるそうです。

なぜ0.85より小さくなるかと言うと、これはラケットが固定されていないからです。

どんなに強く握っていたとしても、実際のスイングにおいてはラケットは「片持ち」の状態ですから、ラケットは後ろに押され、減速されます。

両端を固定した状態での反発係数0.85より小さくなるのはこのためです。

さて、以上のことから分かるのは、実際のプレーでは最大でも0.5くらいの反発係数しか得られないということです。

長々と書いて申し訳ありませんでしたが、言いたいことはこの部分ですw

100km/hという速いボールがやってきても、スイングしなければ返っていくボールは最大で50km/hです。

おそらく、実際にはもっと遅いでしょう。

当てるだけでもボールは返っていきますし、角度をうまく調節すればいいところにプレースメントすることも可能でしょうが、「いいボール」を打ちたければ、(特に遅いボールに対しては)スイングするしかないと思います。

繰り返しになりますが、スイングの仕方が問題です。

もし、「ボレーは振るな」のアドバイスを忠実に守りすぎて威力のないボールしか行かずに悩んでいる方がいらっしゃったら、思い切ってスイングしてみるのも手だと思います。

あ、C太郎さんはまだ振っちゃだめよw

8 件のコメント

  • 足を動かして前に行きながら打てばスイングスピードはその分いりませんので足を動かすといいですね。動けばねw

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  • 物理的なことは全くわかりませんが、ボレーの重要な要素の一つにフォロースルーがあると思います。
    ボレーはバウンドしてからの伸びも大切で、フォロースルーがほとんどないためバウンド後ボールの勢いが死んでしまっている人をよく見かけます。そうなると逆に攻撃されてしまいます。
    テイクバックはコンパクトですが力を抜きインパクトの瞬間力を入れフォロースルーを長く、というのを長嶋茂雄方式で近しい人に教えたことありますが見事伸びのあるボレーが打てるようになりました^^

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  • falsteloさん

    フォロースルーを取ることによって、インパクト時のスイングスピードが確保されるということだと思います。
    フォロースルーがない状態というのは、インパクト時に減速してしまっているか、そもそもスピードが出ていない状態ですからね。
    物理的に理に適ったアドバイスでしたね^^

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  • そうかぁ。ボレーの威力がないのはそういうことか。
    テニススクールでもやっぱり「振らない」指導を受けいていますが、その代わりインパクトの瞬間に足をしっかりと踏み出すように言われています。体の勢いとグリップ力が増すことで、球威に押し返されにくくなって多少生きた球筋になります。
    ともあれまずは、ラケットの面をしっかりキープしてコントロール。それができるようになったら、ラケットの下ヘリを前にスライドさせるように(面が崩れないように)スイングですね?
    振っちゃだめよと言われると振りたくなる~。我慢、我慢。

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  • 練習の時、
    男性コーチがエンドラインから強く打ってくると
    ボールの勢いに完全に負けてしまい、<壁>に
    なれません。
    インパクトの瞬間、強く握る、というのが
    うまくできないんです。
    ので、私は少しためて、インパクトの瞬間には
    たっぷりある体重を乗せる、という意識でやってますwww
    そうすると、自然に少しラケット振ってるみたい(^_^;)

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  • ぎりぎり届くハイボレーがむずかしいです><
    特に男の人が打ってくる凄いスピンのかかった
    ボールのハイボレーは100%はじかれちゃいます。
    振っても、押しても、止めてもだめです^^;

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  • 反発係数は(ボールスピード)に対して定義されるのではなく、(ボールスピード+ラケットスピード)即ち相対的なインパクトスピードに対して定義されるべきものではありませんか?

    反発係数を0.5とすると、50km/hのボールが止まっているラケットに当たった場合の跳ね返ったボールスピードは25km/hですね。
    止まっているボールを50km/hのラケットスピードで叩くと:
    (ボールスピード+ラケットスピード)=(0km/h+50km/h)x0.5+50km/h=25km/h+50km/h=75km/hで跳んでいくはずです。
    跳ね返ったボールとラケットの相対スピードは、ラケットが止まっている場合と同じ25km/hです。
    ご検討ください。

    「片持ち」の状態の「見かけの反発係数」の説明は腑に落ちました。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。