「もう帰りたい」いやいやまだ帰らないで!全盛期並みのプレーもチョイチョイ出た快勝!(プエルトリコチャレンジャー準々決勝 vs. ウォルトン レビュー)

2023 Palmas del Mar (Challenger 75)
Quarterfinals
Kei Nishikori def. Adam Walton, 6-4,6-2

Bloomfield Hills CH 1回戦で再びこのウォルトンと対戦することが決まりましたので、Palmas del Mar CHのレビューはまずQFのウォルトン戦から始めます。

1回戦と2回戦の間には1日ありましたが、この日のQFから連戦となりました。2回戦の勝利インタビューでは、「グランドスラムの準決勝が終わったかなくらいの信じられない疲れが来ている」と語っていただけに体力が心配されていました。
ところが蓋を開けたら最後まで動きは落ちず。この日も試合後に「なかなか来ている」とお疲れのようではありましたが、復帰に際して私が最も懸念していた体力面の不安が大きく後退した試合でもありました。

本人評価(後述のインタビュー参照)は厳し目でしたが、私の目にはショット、動きも良く、全盛期並みのプレーもちょいちょい見られたナイスゲームに映りました。

試合の流れ

不安定なスタート。2回戦と似た感じでしたが、修正力も健在だということも2回戦で分かっていたので、それほど心配せずに見れいられました。最初のゲームはミスを出しながらもなんとかキープ。

攻め球を決めきれない嫌な流れが続きながらも、第3ゲーム終盤でボールの軌道を修正することに成功。ネットすれすれのボールが減り安定した高さの軌道を手に入れると、ボールが深く入るようになります。

リターンは最初から安定してよく入り、流れを掴んであっという間に4−1。

フォアのミスで5−3という嫌なタイミングでのブレイクを許しましたが、すぐさま次のゲームで修正。厳しいフォア攻めを連発してブレイクバック。1stセットを奪います。

最初の良くない3ゲームを上手く乗り切りリードを奪っていたことにより被ブレイクが痛手になりませんでした。
本人は多分、ブレイクされてもそんなに焦っていなかったと思います。経験ありますからねえ。
ショットの感覚という意味ではまだ自信がないとの本人コメントがありましたが、むしろ試合運びとしては試合勘ありまくりでは?と思いました。

ウォルトンはランキング200位台ながらも粘りがある選手で、錦織の良いショットを1本返してくるしぶとさが1、2回戦の対戦相手とは違いました。
1stセットを落とした気落ちもなく、2ndセット序盤も波のないプレーを続けます。

2ndセットは第3ゲームで0−30の場面がありましたが、危なかったのはここだけ。
終盤はやりたい放題。
6−4,6-2というのは理想的なスコアだと思います。
最初競って取り、次に突き放す。6−1,6−1のような圧勝よりも「勝ち方を思い出すこと」スコアだと思います。

各ショットの評価

フォアが好調です。
2017〜2019年の、トップにいた時でもフォアの調子が今日より悪かったことはありました。イップス気味なのかな?と思ったこともありました。この大会では全くそんな様子はなく鋭い振り抜きでクリーンヒットできていました。1大会目から非常に頼もしい限り。

バックハンドも安定しています。クロスはいつも安定していますがダウンザラインも良く入りました。

スマッシュいいじゃないですか。2ndセット1−1の30−30、下がりながらのジャンピングスマッシュはビッグショットでした。
「下手くそな自覚はある」とボソっと喋っているところをWOWOWに撮られていましたが(大会前、松井/上杉ペアと談笑している映像)、いやいや上手でした。

ドロップ、ノーミスではありませんでしたが無理に打つ場面はなく、冴えています。
このポイントなど、コンビネーション最高でした。

サーブは、割と真ん中に入っちゃうなあという感想です(昔からの傾向)。
次のスタッツからの分析を読んでいただければ分かりますが、もっとコーナー狙っても良いのでは。

スタッツからの分析

試合全体の1st Sv Won 68%は少し物足りないませんが、1stセットで58%だったところを2ndセットで81%まで上げており、序盤のもたつきにもスコアが離されなかったことにより徐々に調子が上がってきたことが分かります。

錦織はセカンドサーブからのポイント獲得率は元々高く、この日も56%。これだけのポイント獲得率があるのなら1stは確率を重視せず思い切ってコースを突き、入った時のポイント獲得率を上げる方が得策です(いつものハモ理論)。

ウォルトンとの大きな差は相手のセカンドサーブ時のポイント率で、ウォルトンの44%に対し錦織は何と73%。ラリーを完全に支配した様子がスタッツからも伺えますね。

ブレイクポイントを5本中4本も決めたのも見事。序盤の攻め球ミス以外は試合勘の点でも良かったのではないでしょうか?

試合後インタビュー

Q. 相手の怪我もありましたがストレート勝利でした。試合を振り返ってどうでしたか。

A. (ウォルトンは)ランキングの割にいやらしさがあった。
しっかり最初の数ゲームしぶとくプレーしてきた。
思ったよりディフェンスがしっかりしていて、返してきた。
最初は自分から決めきれず、ポイントを落として競ってしまった。

Q. 体はどうか

A. いや〜もう帰りたいですね。
できる限りのところまで今週は頑張りますけど、なかなか来てます。

Q. (復帰直後として)期待以上のものが出ているのでは

A. 今日の試合は・・・いいんですけど、(内容も大事ですが)勝ったことが一番大事。
しかも2セットで綺麗に勝ったのは評価できる点。

今日は勝ちたい意識が若干出てきたり、足が動いてくれなかったり、違う緊張感があった。
1、2試合目は気楽にやっていたが、今日はちょっと気持ちの動揺というか違いが出た。
2セット目は最後の方気持ちよくプレーしたが、その点の違いはあった。

スコア詳細 byいちにのさん@実況掲示板

set1 6−4
G1 圭 ××◯◯×◯◯×◯◯(1211222111)1-0
G2 魚 ×××◯×(111df2)1-1
G3 圭 ◯×◯×◯×◯◯(11212211)2-1
G4 魚 ◯◯××◯◯(211122)3-1
G5 圭 ×◯◯◯×◯(111111)4-1
G6 魚 ◯×××◯×(111211)4-2
G7 圭 ◯×◯◯×◯(1122df1)5-2
G8 魚 ×◯×××(221AA)5-3
G9 圭 ××◯××(11121)5-4
G10 魚 ×◯◯×◯◯(12df112)6-4

set2 6-2
G1 圭 ◯◯◯×◯(21122)1-0
G2 魚 ××◯◯×◯××(11df21121)1-1
G3 圭 ××◯◯◯◯(111111)2-1
G4 魚 ◯◯××××(222111)2-2
G5 圭 ◯◯◯◯(1111)3-2
G6 魚 ◯◯◯◯(2112)4-2
G7 圭 ×◯◯×◯◯(211121)5-2
G8 魚 ◯◯◯×◯(2111df)6-2

3 件のコメント

  • 団長、おかえりなさい😊❤
    これで、圭の復帰2大会目の応援準備は
    バンタンですね(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

    圭、今度も小気味良いテニスで暴れてくれー❣️💪💪💪

      引用  返信

  • 団長さん、レビュー記事ありがとうございます!! 
    プエルトリコQF 確かに第1セットはウォルトン君がいいプレーしていて、押される場面もあったけど、
    第2セットは錦織選手が情け容赦なく(笑)突き放しましたね。
    ブルームフィールドヒルズ1回戦は、ウォルトン君、プエルトリコの時ほどの粘りがなかった……
    というより、前回よりさらにレベルアップした錦織選手のプレーに意表を突かれつづけて、戸惑っているように見えました。

      引用  返信

  • 団長さん、レビュー記事ありがとうございます。
    最初は恐々というか、怖いものを見る時うす目を開けてみるような心境でみていましたが、
    始ってみればそんなもんいっぺんに吹っ飛びました。
    おまけに勝ってくれたんで、一日中気分が良く作業がはかどるはかどる(笑)。
    ほんと錦織選手の試合で充実した日々を送れることに感謝です。

    「もう帰りたい」って、駄々をこねる子供かッ!(笑)

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。