本日は昨日よりもう少し詳しく、試合を分析してみます。
ライブスコアからの限られた情報からの分析なので、十分ではないかもしれません。
日曜日(28日)のGAORAでの放送を見る前の予習にはなると思います。
全体の流れ
○ベンジャミン・ベッカー 6-3, 1-6, 6-0 錦織圭●
1stセット:2-3からの1ブレイクでベッカーが先取。
2ndセット:第1ゲーム、いきなり0-40とトリプルのブレイクポイントでピンチを迎えた錦織が、逆に第2ゲームでは40-0から逆転でブレイク。そのまま勢いに乗った。
ファイナルセット:ベッカーがサービスゲームでポイントを落とさなくなった。錦織は自身のサービスでもポイント先行され、2ndセットの勢いを持続できなかった。
ゲーム推移
薄い色・・・キープ
濃い色・・・ブレイク
流れが行ったり来たりした。ファイナルセットの序盤をなんとかできればもっと接戦になったかもしれない(が、贅沢は言えまい・・・)。
ポイント推移
例えば「G1圭」は「第1ゲーム、錦織のサーブ」の意味です。
G1ベ××○○×× 0-1 出だしとしてはOK
G2圭○○○×○ 1-1 ポイント先行してスイスイキープ
G3ベ○○×××× 1-2 リターンゲームでもポイント取れてる
G4圭○○○○ 2-2 サービスゲーム調子良い
G5ベ×○××○○○××× 2-3 ブレイクポイント逃したがいい感じ
G6圭×××○○× 2-4 なぜか突然ピンチに。そしてブレイクされる
G7ベ×××× 2-5 ベッカー勢い付く
G8圭×○×○○○ 3-5 なんとかついて行こうとする気持ちが伝わる
G9ベ×××× 3-6 ベッカーきっちり締める
Set2
G1圭○×××○○○○ 1-0 大ピンチから逆転でキープ!
G2ベ×××○○○○○ 2-0 逆に40-0から逆転で取る!
G3圭○○○○ 3-0 錦織、勢いに乗る
G4ベ○○○×○ 4-0 良く見た光景「錦織劇場」発動か?
G5圭×○○○○ 5-0 実況掲示板がざわつく。「すげえええ」
G6ベ×××○× 5-1 1ゲーム返すベッカー
G7圭○○×○○ 6-1 しかし錦織は止まらない
Set3
G1ベ×××× 0-1 ベッカー気持ち切り替える
G2圭×(○×)○×× 0-2 勢いを止める痛いブレイク
G3ベ××○○×× 0-3 1ブレイク差なのだが、0-3は焦ってもおかしくない
G4圭○○×××× 0-4 先行したが・・・。
G5ベ××○○○××○×× 0-5 反撃しようと粘ったが・・・
G6圭○××○×× 0-6 最後は流れを止められず
(スコアリング協力:Nosaさん)
※スコアリング中は慌ただしく、間違いがある可能性があります。あしからずご了承ください。
御覧のように、流れが激しく変わったジェットコースターのような試合でした。
1stセット:キーポイントとなった第6ゲーム
錦織の出だしは非常に良かったです。11か月振りの実戦でどうなることか・・・と見ている側としてはドキドキでしたが、難なく2つのサービスゲームをキープして、続く第5ゲームはブレイクポイントも握ります。
「やっぱり錦織はタダものじゃないのでは・・・?」
といった雰囲気に、実況掲示板が包まれます。
しかし第6ゲーム、突然ピンチを迎えます。
実はこのような展開は、錦織の故障前も何回かありました。スイスイキープしているのに、なぜかいきなり連続でポイントを取られてピンチを迎えるのです。
これは、ビッグサーバーではなく、かつストロークが超攻撃的な錦織のプレイスタイルが影響していると思います。
つまり、リスクが高いのです。
誤解しないでいただきたいのは、リスク=危険ではないことです。「リスク」の正しい解釈は、「変動幅が大きい」ということです。英単語で言いかえると、volatilityです。
これは、プレイスタイル上ある程度致し方ないところではあります。脆さもありますが、いい方向に働けば大物を食うこともできるのです。
錦織のサーブは決して悪くありませんし、ダブルフォルトが多い印象がありますが、実は2008年に取った統計では1試合平均3本程度で、トップ100選手では平均的な数字でした。
しかし、ダブルフォルトをする場面が良くない印象があります。セカンドサーブを叩かれてしまう傾向があるため、どうしてもプレッシャーがかかってしまうのでしょう。
テニスジャパンのレポートを引用しますと、このゲームも、
第6ゲーム、錦織から2-3、錦織のサービスゲーム。
1ポイント目は長いラリー戦から錦織が先にミスをしてしまい0-15。
次のポイントも錦織のミスで0-30になり、さらにダブルフォルトで0-40。
サーブからドロップショットで1本返し、次のポイントはベッカーのミスで30-40まで挽回。
しかし、次のポイント、錦織のセカンドサーブをベッカーにたたかれてしまう。
ここでサービスゲームをブレイクされてしまい、ゲームカウントは2-4に。
と、錦織がサービスゲームを落とす時の典型的なパターンであったことが伺えます。全体的なプレーのレベルはどうやら素晴らしいものだったと思うので、この辺をなんとか上手くゲームメイクする術を身につけば楽になると思います。
具体的には、0-15や0-30のときの信頼できるポイントパターンを確立することだと思います。
ビッグサーバーなら1本ドカンと打っておくという手もありますが、錦織の場合だと
- コースをついたサーブを打つ。特に深さは重要。
- それまであまり打ってない球腫のサーブを打つ。
- (あるなら)その日、効果的な種類・コースのサーブを打つ。
- ボディへサーブを打つ
などの工夫が、サーブに必要になってくると思います。
見事だったのは、このブレイクのあとのベッカーです。
スコアのところで青色を付けたように、第6ゲームのブレイク後は、ポイントを与えずにキープし、錦織に反撃する余地を与えませんでした。
2ndセット:久しぶりの錦織劇場
2ndセットに入っても錦織の劣勢は続きます。第1ゲームでいきなり15-40の大ピンチ。ここを落としたら、ずるずると行きかねません。
しかし錦織はここからカムバックしてブレイクを許しませんでした。実況掲示板も大いに沸きました。頑張ってボールに食らいつく錦織の姿が目に浮かぶような、素晴らしいキープでした。
第2ゲームは逆にベッカーの40-0から晩回してこの試合初のブレイク!
「復帰後初ポイント」、「復帰後初ゲーム&初キープ」、「復帰後初ブレイクポイント」の度に歓声(アスキーアート含む)を上げてきた実況掲示板の住民たちは、この「復帰後初ブレイク」にさらに盛り上がりました。
この時点で、
「復帰初戦としてはすでにいい試合じゃないか?」
という感じに思えてきました。少なくともランキング40位とちゃんと勝負になっていますし、きっといいショットもたくさん打っているに違いありません。日曜日のGAORAががぜん楽しみなってきました。
錦織はその後も加速し、第3、第4ゲームも奪って4-0とします。
「こ、これは何回も見た状況・・・錦織劇場じゃね?」
という声が実況掲示板に上がります。
錦織の試合で大変特徴的なのは、セットが変わるとプレーのレベルを上げることができるということです。この試合は不発でしたが、試合の後半にかけてレベルが上がってくることが良くあります。2008年のデルレイビーチ決勝などもそうでした。
このあたりが、錦織のテニスの可能性を感じる部分です。日本人だから、若いから応援しているだけではなく、錦織のエキサイティングなテニスそのものが人を惹きつけるのです。
ともかく、この「プチ錦織劇場」(勝てなかったのでプチw)には大いに興奮し、感動しました。そういえば北京オリンピックの第2セットも0-5から逆転で取りましたね・・・。あれを思い出しました。
ぜいたくなもので、「復帰後初ポイント」に大いに歓喜し、「無事に痛みなく試合を終えてくれればそれでいい」と思っていたのに、ここまで来ると欲が出てきて「勝ってほしい!!」になっていました。おそらく、実況掲示板の他の人たちも同じ気持ちだったでしょう。
ファイナルセット:ベッカーがレベルアップ
ファイナルセットは0-6と一方的な展開になってしまい残念でしたが、「スコア以上にタフな試合だった」と試合後に語ったベッカーの言葉は本当だと思います。
ベッカーは試合を総括してこうも語っています。
I just tried to stay calm after I got down in the second set, and refocused for the third set. I think I did well. I came out right after the changeover in the third set and I felt good. I was a little bit more aggressive, attacked the ball, and it helped me at the end.
(2ndセットを落とした後、とにかく落ち着こうとした。そして3rdセットに向けてもう一回集中力を高めたんだ。それが上手く行った。3rdセットのコートチェンジをしたときにはもう気分は良くなっていた。少しだけアグレッシブにプレーし、ボールをひっぱたいたのが最終的には良かったと思う。)
(Tennis – ATP World Tour – Delray Beach Tuesday – Fish Opens Title Defenceより)
ファイナルセットに攻撃的になったベッカーが、試合勘の戻らない錦織に対して効果的な試合運びをした、と言えそうです。ファイナルセットの錦織は、先のテニスジャパンのレポートによると、攻撃的には行ったもののサーブやストロークにミスが出たそうです。
上のスコアの青字で書いたベッカーのサービスゲームに注目してみてください。試合の重要な場面でことごとく勢いよくキープしています。錦織の赤字で書いた2つのサービスゲームは、逆に勢いを止めてしまうものでした。この辺りが長いブランクの影響と言えそうです。
錦織のプレー自体はかなり良かったらしく、自身(オリバー錦織?)もFacebookで
The other good news is that my level of tennis, after 11 months of not playing a match, was very good.
(もう一つのグッドニュースは私のテニスのレベルが、11か月のブランクの後にも関わらずとても良かったことです。)
と語っています。
今後、試合勘を取り戻せればかなり期待できるのではないでしょうか。
肘の状態も良好!
試合の結果よりも気になっていた肘の状態も良好のようです。同じくFacebookでのコメント全文です。
I am back in Bradenton. I lost to the #3 seed in the first round. The good news is that my arm is feeling good and was able to play three sets with-out any real problems. The other good news is that my level of tennis, after 11 months of not playing a match, was very good. Today I continue my rehab back at Bolletti…
いやー、本当に良かった!なんともなかったみたいです。みなさん、私のグダグダ分析よりも、これが知りたかったんでしょw?
だから最後に書きましたwww
スタッツ分析は、長くなりすぎましたので明日に回します・・・。
スバラシイ解説です!こんなに充実した記事が書けるのは、団長さんだけだと思います!次の記事も楽しみにしてます!
そういえばさっき、Kei Nishikoriのフェイスブックに新しい報告が。腕の痛みはないそうですよ!よかった~。
Kei Nishikoriさん practice today. Hit well. No pain at all which is good sign. Also wanted to say thanks for everyone that reached out to welcome me back on the tour. I appreciate it so much.
もうひとりのきょうこ引用 返信
Good Job!! Hanaji san!!
きょうこちゃんと同じように、圭君のコメントを貼り付けようと
来てみたら、すでに残してくれていました。
ありがとう!きょうこちゃん!
圭君が圭君らしく、はじけてくれることが
ミラクルな試合を見ることが
最上の喜びです
さて もうすぐ日曜ですね
圭君の試合・録画放送が楽しみです。
bluetti引用 返信
団長さんの解説、試合の様子が見えてくる気がします。
わかりやすい!
肘の様子、心配だったのでよかったです(^_^)
皆さんありがとう。
ますます28日の放送で試合を観るのが楽しみになってきました。
maru引用 返信
圭君とそのチームにとって試練の11ヶ月でしたね。その間も積み重ねがあったけど試合のようにはっきりした結果がでてこなかったので、つらかったでしょうね。負けたけどこんな良いことがあったと冷静に分析してモーティベーションが、上がった様子がつたわってきました。ゆっくり次にむけて進んでいけそうで一安心です。
chacha引用 返信
公式ブログ来てます。
【from 錦織圭】 デルレイビーチ大会を終えて – 錦織圭公式サイト|KEINISHIKORI.COM
netdash引用 返信
復帰初戦からランク20位相手に普通に試合をしてしまうあたり、やはり驚きました。
でも、もっと上を見てまた練習をしているのでしょうね。
facebookや公式ホームページもあって、分析はさらに重厚感を増していますね!
試合+このブログ、の組み合わせをこれからも楽しみにしています。
Nosa引用 返信
公式ブログを読むと、手応えを感じていることが伝わってきますので、嬉しいかぎりです。
痛みがなさそうなのが何よりですね。
明日のGAORA本当に楽しみです。
春はもうそこまでという感じですね。
ムンママ引用 返信
皆さまコメントありがとうございました。
本当はもっと短くまとめるべきなのですが・・・。
netdash引用 返信