【試合のキーポイント追記】好調ディミトロフに対し、ファイナルセット魔神の神通力不発(2017ブリスベン決勝)

2017 Braisbane (ATP 250)
Grigor Dimitrov[7] def. Kei Nishikori[3], 6-2,2-6,6-3

総評

勝って欲しかったし、勝つべきだったとは思いますが、ディミトロフが終始良かったです。
フォアの攻撃力がありましたし、ディフェンスでのミスが少なかった。

ウィナー 圭21 ディミ24
エラー 圭25 ディミ23

 このスタッツ通りの差です。僅かな差ではありましたが、ウィナー、エラーの両方でディミに上回られました。
 ファイナルセット終盤に調子を上げるいつもの錦織が見られなかったことが一因ですが、毎回毎回発動できるものでもありません。
 確実なキープ、そして早めのブレイクで先行逃げ切りのスタイルが、長い目で見ると目指すべきものです(錦織も十分理解しています)。
 2ndセットの追い上げは素晴らしかったものの、自分も体力を消耗していたり、余裕があるわけではなかったりするので、相手が落ちてくれないとこういうことはあり得ます。

 錦織はフォアが浅かったことが最後まで響きましたし、細かいショット選択ミスもありました。
 分析すると、

  • 錦織はストロークミスが固めて出る場面があったけど、ディミにはなかった。
  • 錦織のフォアが浅く入ってディミのフォアで攻撃された
  • いつもなら抜けるパスが甘く入ったり、ほんの僅かの差でネットになった
  • クロスにアプローチして、読まれた
  • 明らかにデュースサイドのワイドサーブに対応されているのに打ち続けた(1stセット最後)
  • 挽回のために攻撃的に行くべきところを、やや守ってしまった(1stセット最後)

 このあたりの小さなキーポイントの積み重ねでしたね。
 2ndセットの挽回は見事でしたが、とにかくフォアの調子が上がらなかったことが痛い。
 でも、こんなに完成されたテニスをするディミトロフははじめて見ました。ティーム、ラオニッチ、錦織を3タテして今後、手強い相手になってきそうです。

試合のキーとなった数ゲームの分析

 最初のキーポイントとなった、1stセット3−2からの錦織サーブのゲームと、その前後を振り返ってみたいと思います。

 錦織はデュースサイドのワイドサーブ(勝手に通称「鼻血サーブ」w)を多用する作戦で試合に入ってきたと思います。

 最初のポイントはそのサーブでリターンミスを誘います。

 次のポイントは、1stを入れるがディミが飛びついて深くリターン。
 錦織はフォアでディミのバックを攻めますが、ディミが上手くディフェンスしてスライスで深く返す。
 錦織は高めのスピン系フォアで再びバックに深く入れますが、これをディミがライジングでストレートにウィナー。

 次のポイントは確か、フォアのクロスにディミがタイミング合わずネット。

 そしてセンターへのサーブで40−15。

 ここまでは良かった。いや、2本目のバックのストレートが鮮やかすぎて、何かいつもと違うディミを感じていました。

 次のポイントが勝負の分かれ目。
 セカンドサーブの読みを外そうとして、フォアへスライスサーブ。
 これをディミがジャストミートして、クロスへ火の出るようなリターンエース。
 2本目の鮮やかなウィナーと合わせて、攻撃への意欲を増していくのが感じ取れた。
 センターにセカンド打っていれば結果は違ったかも知れないが、考えた末の結果だから、このポイントを取られたことは仕方ない。

 次はディミのリターンがライン一杯に入って錦織がバックをネット。
 たまらずチャレンジするが、わずかに数mmだけ入っていた。
 これも、難しい球だったし、一瞬アウトか?と思ったので、まあ、仕方ないかもしれない。

 問題は次のポイント。
 またもやワイドにサーブを入れ、足下に深く返ってきたリターン。
 これに対し足を止めてしまって、がら空きのコートに打ったフォアがサイドアウト。

 最後は普通のラリーでバックハンドをネット。

 最後の2本が悔やまれた。
 振り返れば、ディミのリターンが非常に良かったことが一つの要因。
 次に、事前の作戦と、それまでのデータからワイドサーブに頼ってしまったことがもう二つ目の要因。
 そして錦織が最後、守ってしまったことがこのゲームを落とした最後の要因だった。

 ワイドサーブを待たれていることは、リターンエースを取られた時点で気づけばベストだったが、コートの中にいればここで気づくことは難しかったかもしれない。でも、念のためにコースを変えても良かったかも知れない。
 不可解なのは、後の第8ゲームにも3本、同じコースに打って3本ともリターンを深く打たれ、落としてしまったこと。
 錦織のワイドサーブは速くて160km/h。
 有効なのは、読みを外して打つからであって、待たれてしまっては逆に打ちごろになってしまう。
 フォアが当たっている今日のディミトロフに対してはなおさらであった。
 ちょっとこの選択は残念だった。

 さらに、ディミは次の自分のサービスゲームで粘りのディフェンス、飛びつきスーパーボレー、フォアの攻撃、強力サービスと、あらゆるショットを成功させ流れを作った。
 これが錦織にストレスを与えたと思う。

 もっと言えば、2ゲーム前の2−2からのディミのサービスゲーム、錦織はやや流し気味にゲームを落とした。

 これは、賛否両論あるところ。
 今日の試合だけを考えたらここは必死に追いかけた方が良かったかも知れないし、全豪までを考えたらコストパフォーマンスの悪い頑張りは避けた方が良いという考えもある。
 (追いかけてもゲームを取れる確率は低かった)

 また、錦織は度々、捨てゲーム、捨てセットを作る。錦織は、捨てを作っても後でギアを上げることができる希有な選手。
 かつて、サンプラスもそうだった。
 実際、2セット目はがむしゃらなネットプレーで流れを引き寄せて奪い返した。

 逆の考えもあって、ナダルのように全てのポイントで全力でプレーして、プレッシャーをかけるという方法もある。相手は息がつけない。
 これには強靱なフィジカルが要求される。
 怪我が多く、体の小さい錦織向きのプレースタイルではない。
 でも、勝つために時にはそういうプレーも必要なのも確か。

 以上のような様々な考え方を、その場その場で判断して最適な解をを探さなければならないのがテニス。
 裏目に出ることもあります。

 そして作戦を遂行するためには、そのための「駒=ショット」が備わっていなければならない。
 今日はフォアハンドが浅く入ったこと、ワイドサーブに対応されたことが持ち駒の計算の狂いだったと思います。
 サーブのコースは2set目以降、変えてきましたがフォアハンドはむしろファイナルセットでコースが甘くなってしまいました。
 反省点としては、このあたりの修正だったかなあというのが感想です。

206 件のコメント

  • @ROM さん

    @NORICHAN さん

    混乱させてスイマセン。「最後の全豪」って事なんですね。ヨカッタ。
    けど、最後の全豪って事は今年引退なのかもしえません。年齢的にも出る大会も限られるだろうし、少ないチャンスでぜひ成長した錦織選手と一度ツアーで再戦してほしいものです。

    トミー・ハース選手とロビン・ハーセ選手わかります。カタカナにすると違いますが、HaasとHaaseで日本人にはわかりにくいです。

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  • トムさま
    ハースとハーセ。共感頂けて恐縮です(笑) 私、他にもいっぱい混同します。~ビッチ系は特に。酷いのはイヴァニセビッチ&イヴァノビッチ。男女だし(笑) フロリアン・メイヤーとレオナルド・メイヤー。いやこれは単なる同姓か。

    ハース選手はGS卒業という事かも知れませんね。ストレートインはできないし、予選から出るにしてもWC貰うとかPR使うとかが必要な場合もあるし。年齢と体力と常に相談しながらのGSはキツイです。
    あ、ROM様の仰るように、これから先はWEBで、いやフォーラムで。

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  • NORICHAN さん、トム さん、ハース選手が出て来た頃は、よく「ハーセ」と表記するテニス誌等もありましたので・・・(+_+)
    我々が間違えても仕方ない状況でしたよね~m(__)m

    *ホス と表記される場合もありました(+_+)

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  • NORICHAN 様
    フロリアン・メイヤー選手はマイヤーと、レオナルド・メイヤー選手はマイエルという表記があります。(たぶんドイツ語やスペイン語発音に近いのではないかしら?)
    英語発音のメイヤーと表記されることが多いですが、マイヤーとマイエル、と頭の中で変換されたらどうでしょうか?(紛らわしいので、私はそうしています。)

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  • @yuri
    楽天で ヨアオ ソーザ に挑戦されて パワー ショット ラリーを強いられて 受けて 打ち合いを繰り返して
    腰を痛めた パターンを 鮮明に思い出させましたが あのケースに陥れられるのは ミステークですネ!

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  • 風さま
    そっか! 英語発音で考えるからこんがらがるんですね(笑) 原語発音で覚えるようにします。有難うございます。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。