スコアは珍しいが「錦織っぽい」、錦織の良さがしっかり出た試合(2024ブラティスラバCH 1回戦)

2024 Bratislava Challenger (Challenger 125)
1st Round
Kei Nishikori def. Marton Fucsovics[3], 6-2,1-6,6-1

珍しいスコアになりましたが、セカンドセット以降はお互いにスコアほどの内容の差はありませんでした。

1stセットは錦織が完璧。
とにかく攻めのタイミングが早いしディフェンスも良い。
攻め球のミスがないとこのくらいのクオリティを出すことができます。錦織本来のテニスができました。
ただそれが1試合通じて続くかどうかが課題。それができればトップ10に戻れます(プラス、1大会通じての体力が必要ですが)。

2ndセットは少し増えたミスに加え、パワーをゴリゴリ押し付けるフチョビッチのプレーが冴え、劣勢に。
ただ第5ゲームでは12ポイント連続でリターンを返し粘りを見せるなど、1-6というスコアより内容は接近していました。
最後は追わず、流してしまいましたが、いつものファイナルセットの切り替えに期待しました。

しかし、ファイナルセットの最初のゲームでミスが続き0-40に。最終的にこのゲームを取るのですが、ここでの挽回がこの試合の勝敗を分けました。
攻めの姿勢を崩さずにミスもしないという、強靭なメンタルがないと遂行できないことをやってのけました。この取り方がいかにも錦織だったので、「錦織っぽくなってまいりました」とツイートしました。

取られていれば一気に持っていかれかねないところを、取ったことで今度は錦織に一気に流れが来るのがテニスの面白いところであり、怖いところです。
ポイントの単純な加算ではなく、「ゲーム」でリセットする(さらに「セット」でリセットする)というシステムがそうさせているのだと思います。

第2ゲームでフチョビッチがミスを続け錦織がブレイク。
第1ゲームを取れなかったショックなのか、はたまた2ndセットからの強打がオーバーペースだったのか、理由は分かりませんがとにかくますます錦織っぽい試合になってきました。

そして第3ゲームで急にサービスがライン際にポンポン入るようになります。何かが悪くなると何かが良くなり(良くして)どうにかする。さらに錦織っぽい試合になってきました。

第4ゲームで再びフチョビッチがミスを重ねたのも、この第3ゲームがあったからかと思います。自分のプレーは良いはずなのに(実際、最終的にミスにはなっていたが躍動感はあった)、なんだかよくわからないがゲームが取れない。リードするのは自分のはずだったのに。
そう思っている間にあっという間に0-4で、錦織に嵌められた感覚になったと思われます。

すごいのは錦織の中にもアップダウンはあったはずで、いつ崩れてもおかしくないくらいのプレッシャーがあったはずですが、あまり表に出さず淡々と立て直すところ。
本当に我慢強いし、特別な気合いで特別なプレーに頼っているわけではないところが、何回もこのような挽回を可能にさせているのかなと。
特別な選手だと思います。

最後、フチョビッチが投げやりな感じになる場面もあり(その後、我に返った感じでしっかりプレーした)、そこがますます錦織のメンタルの強さを際立たせました。

実に「錦織っぽい」試合でした。

今年、ずっと良いプレーをしていて特にフォアがよく、スロースターターの悪癖も顔を出していませんが、逆に2ndセットで調子が落ちる現象が気になっています。
プレーは良くても体力が20代の頃と比べると落ちているのは仕方ないことなので、ファイナルセットの神通力も体力的に昔より発揮しにくくなっているはずで、体力の回復にまず取り組むべきですが、2ndセットで変化する調子に、ピンチになる前にどう対応していくかはもう少し現状でも改善の余地があると思います。
私は、急がば回れで少しショットのリスクを押さえラリーを長くするのが良いのではないかと思っています
体力温存のために早めの攻めでショートポイントを増やすというのが基本戦略ではあるものの、ポイント数が増えて仕舞えば結局体力が削られるしメンタルの負担も大きくなるので、ニュートラルの状況から際どいコースを狙うのはほどほどにして、まず真ん中であっても深さを重視。攻めるボールを選別して確実な攻めを心がけると良いと思います。
落とす時は、3球目攻撃で打点の入りが雑になったり、カウンターへの対応が微妙に遅れて球が弱くなるパターンが多いように思います。
ラリーが長くなることにより体力は使うかもしれませんが、最終的にはこの方がスコアが安定する気がします。

ファイナルセットになってしまえば次の試合を考える前に自分の力全てを使って目の前のポイントを取らなければならなくなってしまいますので、そうなる前にしっかり対処して体力を温存できたら良いなと思います。

次の試合は木曜日でしょうか。対戦相手はVirtanenとKleinの勝者。どちらも知らない選手ですがフチョビッチより強いということはないでしょう。
その次はなつかしのククシュキンとの対戦に期待したいです。9勝0敗と相性抜群の相手ですが、味のあるテニスをする選手で試合内容はなかなか濃いです。

SFはサフィウリンかカラツェフでしょうか。去年の木下オープンであれだけ活躍した(準優勝)カラツェフがチャレンジャーでシードも付いていないのが意外です。
ぜひSF以上、できれば優勝を期待したいところです。

13 件のコメント

  • 早速のレビュー、ありがとうございます。
    本当に、その時々のちょっとしたプレーから内容以上に大きなスコアの差につながってしまいましたが、ファイナルセットの第1ゲーム大ピンチを何とか乗り切ったことで、一気に錦織選手が流れを持っていったような試合でした。
    今日は何としても勝って、今大会はぜひ上位進出、ポイントを獲得してほしいと思っていたので良かったです。
    ちょっと痩せたかな?と思いましたが、体は大丈夫そうなので、出来るだけ長い期間たくさんの試合を応援させてほしいです。

      引用  返信

  • 早々のレビュー有難うございます☺️
    1stセットの錦織良かったです!バラエティに富んだ攻撃で楽しませてくれフチョビッチも対応できませんでした。
    2ndセットはフチョビッチがギアを上げたので取られてしまいましたが、ファイナルセットの第1ゲーム取れたのが団長が仰る通り勝敗を分けた気がします。
    フルセットになってしまい疲れが気になりますが、何とか次も頑張ってもらいたいです。

      引用  返信

  • Virtanen選手 VS Klein選手が10/30日に予定されました。
    この勝者との2Rは、11/3日が決勝という日程なので、10/31日で確定です。
    似たような実績?体格?の両選手ですが、Virtanen選手は先週のBrest CH(100格)で優勝🏆して今週のランキングで初めてのトップ100入りとなっています。
    その分、Virtanen選手に勢いがあるかな(。´・ω・)?

      引用  返信

  • 早朝からライブ応援された方々、お疲れ様です。

    私はどうしても時間的に無理だったので、情報を遮断して
    見逃し配信で視聴しました。

    第1セットはあまりにも素晴らしくて
    錦織選手のテニスの上手さと技術の確かさを堪能しました。
    このまま行ってほしいと願いつつ、やはり?というべきか
    ここ最近の傾向でもある第2セットで落ちる、という流れに・・。
    (でもこれは実践を重ねると少しづつ修正できるかもしれないと思っています。
    第1セットで頑張りすぎてその反動が第2セットで出てしまっている様な感じがするので・・。)

    でもきっと第3セットではうまく切り替えてギアを上げてくれると信じていました。(第2セット終盤の段階ですでに「第3セットで勝負」という錦織選手の決意を感じました。)

    「第3セットの初めをキープできたことが全て」と
    皆さん仰っていますが、そこは私も同感です。

    団長さんが繰り返し「錦織らしい試合」と言われましたが、
    本当に「これぞ錦織選手!」ともいうべき内容でした。
    錦織選手の試合ならではの面白さと不思議さをギュッと詰め込んだ様な感じですね。
    会場に居た観客の人たちも「錦織選手のテニス」の魅力に引き込まれたことでしょう。

    次があるっていいですね。
    行けるとこまで行ってほしいです。

      引用  返信

  • スコアだけ見た時には、「ご乱調だったのね」と思いましたが
    追っかけで全試合通して見ると、2セット目は、1−6というスコアになるのが
    不思議なくらいの試合運びでした。
    ジャパンオープンから、テニスの質が落ちていないことがとても嬉しいです。
    怪我前は、スピンがかかって、ライン際にストンっと落ちるフォアが
    錦織選手らしいショットで大好きでした。
    復帰後、それに加えて、ショートクロスで直線的にガツンと力強く決まるフォアも
    多く見られるようになったと思います。
    チャレンジャーの試合でも、オンデマンドでテレビ画面で見られるなんて
    wowowさん、ありがとう!
    2回戦もいいプレーが続きますように。

      引用  返信

  • 錦織選手 VS Klein選手 のシングルス2R
    日本時間の10/31日PM8:30開始の第3試合に予定されました。
    第3試合が日本時間の11/1日AM0:30以降の開始となっています。
    前の2試合が縺れなければ予定通りの開始になるかと思います😪💤

    Lukas Klein選手(スロバキア:146位)最高位は今年8月の109位となっています。
    Klein選手、ここ2年ほどは200位以内に在位し続けていまして、決して油断は出来ません。
    ツアーレベル本戦での活躍もチラホラ確認されます。
    ここから連日連戦になります。先手必勝で短期決着を~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

      引用  返信

  • クレイン選手、試合は見ていませんが、勝利後インタビューで「慣れ親しんだコートなので」と言っています。一回戦の相手は上り調子とはいえ一回も負けたことがなかったそうで、1時間ほどで勝利しています。彼にとってホームゲームということもあり、錦織選手はどアウェーになると予想されますが、それは「いつものこと」なので本人は何も気にしていないはずです。
    サクッと勝って欲しい。

    団長様が気にされているカラツェフ選手ですが、年初のブリスベン で膝を痛めて途中危険、その後手術して4月末まで休んでおります。復帰後もなかなか調子戻らず…といった感じです。

      引用  返信

  • ヘルシンキCHにフォーニーニ選手がWCで参戦・・・(;^ω^)
    錦織選手、現時点で上から10番目(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

      引用  返信

  • 団長さん、今回も貴重な睡眠時間を削ってのレビューをありがとうございます。試合の流れがよくわかって読みごたえがありました。

    第1セットはトップ10並みのテニスで、ちょっと驚きました。
    ツイキャスでは、パワーにスピードで対抗するテニスと解説されていましたが、クオリティ高い洗練されたラリーのスピードに、天才がキラめいてました!
    が、これをずっと最後まで続けるにはハイレベル過ぎて、相当な体力と集中力が要りそう。
    レビューに書かれていましたが、ピンチをできるだけ未然に防ぐためにも急がば回れ的な戦術も加えられたらいいなと思います。

    ファイナルセットは味わい深かったです。
    アップダウンやプレッシャーがあっても、「あまり表に出さず淡々と立て直す」、「本当に我慢強いし、特別な気合いで特別なプレーに頼っているわけではないところが、何回もこのような挽回を可能にさせている」、「特別な選手だ」と。この部分、”そのトオーリ”と歌いながら読みました。
    相手は、あれれ?優勢だったはずなのに何がどうなってこうなった?と、ほんと、「錦織に嵌められた感覚」に陥ったに違いないですね。

    この慌てず騒がず一つ一つ工夫してプレーを繰り出していくところに、ハラハラさせられ、胸が熱くなり、最後には天才の底力(一筋縄ではいかない才能)を感じて、呆気に取られる…
    🎵結果だけじゃわからぬ中身を見て初めてわかる錦織テニスの面白さ🎵(字余りすぎる短歌)
    自分が”変な人”でよかったとシミジミ思う。笑

    下団さん、ROMさん、2回戦の情報をありがとうございます。応援がんばりましょう!

      引用  返信

  • もう2回戦が始まってしまうけど、遅ればせながらレビューをありがとうございました。
    錦織っぽいと何度も書いていらっしゃいましたが、これはもう嬉しくて仕方ない最高の表現じゃないでしょうか。
    特別な選手と団長さんに言わしめる錦織のプレーをしみじみと噛み締めて、今日もまたフチョッビッチ戦を見てしまいました💦3セットそれぞれに錦織らしさが詰まっていてあきません( ¯﹀¯ ) 今日はどんな試合になるかな?
    2セット目に注目ですかね(^_^;)

      引用  返信

  • 今夜は時刻通りに始まりますね!
    団長さんの「酔っ払いツイキャス」たのしみにしています。

      引用  返信

  • 前の試合カラツェフ勝利で0:30開始確定ですね。
    オンデマンドがズルズル遅れ出してもLive状態に戻せるように
    タブレットでチャレンジャーTVも映す
    という併用技を編み出したので
    安心して団長さまついキャス解説も楽しみたいと思います。

      引用  返信

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。