感動の優勝。錦織が再びコートに立った日から今回の優勝まで、濃密な応援の日々を振り返る(2024ヘルシンキCH 決勝 レビューその1)

2024 Helsinki Challenger (Challenger 125)
Final
Kei Nishikori def. Luca Nardi, 3-6,6-4,6-1

まさに不死鳥錦織という試合でした。1年5ヶ月ぶりの優勝は格別な味がします。
「たかが」チャレンジャーの試合です。優勝しても100位を切ることはできません。テニス界の注目はもっぱらATPファイナルです。北欧のチャレンジャー大会に注目していた人がどのくらいいたでしょうか・・・私たちを除いて!!!

我々錦鯉にとって、錦織が出る試合は全てグランドスラムと同等の貴重な機会です。そんな試合を先週、今週と9試合も見ることができました。こんなに幸せなことはありません。

2014-2016年、2018年などはこんな日々を年間通じて過ごしていました。今週はその時と比べても全く遜色ない熱の入り方でした。熱が入りすぎて実際に発熱してしまいました。そんなに入れ込んでいたのにナルディに先に鼻血を出されてしまったことが唯一、悔やまれます。

何はともあれ、グランドスラムだろうが、チャレンジャーだろうが、錦織の試合であれば幸福度はあまり変わらないようです。

昨日のツイキャスは過去イチ盛り上がりました。私の体調不良によりスコア付けを諦めたので、その分コメントを読み上げ交流が深まったと思います。ドラマチックな試合展開も盛り上がりの大きな要因でした。
ですがそれだけで500人ものテニスファン(延べでは2400人越え)がチャレンジャー大会に集うでしょうか。否。
錦織のことを忘れず応援し続けた人々が、こんなにもたくさんいたのです。
感激しましたし、一体感が半端なかったです。
優勝した瞬間からしばらくは画面上に花火や紙吹雪が舞い続けお祭りムードでした。

今年、復帰直後はなかなか調子が上がらず苦しみました。しかし8月のモントリオールから一気にテニスがよくなり次々とハードルをクリア。ついに優勝まで漕ぎ着けました。
昨年6月の復帰時(カリビアンオープン)にもチャンレジャー優勝を果たしていますが、今回の方がかなり険しい道のりでした。対戦相手は全員23歳以下の活きの良い若手で、2回戦キム(134位)、QFファーンリー(94位)、決勝ナルディ(102位)あたりは来年にこのランキングに留まっていることはないだろうと思われる有望株でした。

そして錦織の調子も8月からの連戦、特に4試合を戦った先週の影響があったのか非常に悪く、大会を通じてストロークミスが目立ちました。
それでも「最終的になんとか勝つ」錦織テニスの真骨頂を存分に味わうことができた、いや、錦織に無理やり味あわされた(笑)、濃密な1週間でした(心臓がもたないので次回はほとほどにお願いします・・・)。

復帰後、最大の課題は体力であると言い続けてきました。実際、先週のSFサフィウリン戦では体力がもう少し残っていればいい勝負ができていたと思いますし、長年の観戦経験から、あの状態では今週はかなり疲れが残っているだろうし、最悪は棄権もあり得る。怪我にならないようにむしろそれもアリ。というスタンスで見ていました。そんな素人の予想を錦織は超え、結局5試合を見事に戦い抜きました。

先週からカウントすると2週間で9試合。しかもモントリオール以降3ヶ月以上にわたり、エントリーした大会は全て出場しました。そして体力切れの試合はありましたがリタイアはゼロ。何よりもこのことが素晴らしく、来年に向けて最大のポジティブデータです。

ところで皆様は「年末に帳尻を合わせる錦織」をご存知でしょうか。
試合の終盤(ファイナルセット)だけでなく年の終盤にも強いのが錦織。要するにラストスパートできるメンタリティを持っているのかと。
いませんでしたか小学生の頃、そういうお友達。マラソンでハァハァ言って苦しそうに走っているのにラストスパートやたら決めてくるやつ。あれです。
タイブレークに強いのも同じ理由かと推測しています。

2010年 初の長期故障休養から復帰後、チャレンジャーから始めて、ギリギリでトップ100入り
2011年 松岡修造の46位の壁を抜けない時期が続くも、バーゼルでジョコに勝利しブレイク、24位でフィニッシュ
2012年 ツアー2勝目の産みの苦しみを味わうも秋の楽天オープンで優勝、17位でフィニッシュ
2014年 クアラルンプール、楽天連続優勝の反動で上海は初戦敗退も、パリでSF進出し自らツアーファイナル出場を決め、そのままSF進出。
2015年 全米1回戦負けなどやや不本意な成績が続くも(隔年の法則)、8位でツアーファイナルに滑り込み。フェデラー戦で素晴らしいプレーを見せる
2018年 長期故障休養明けを再びチャレンジャーから始め、そもそもショットが入らない状況から怒涛の後半追い上げでツアーファイナル進出。
2024年New! 故障から復帰するもパリ五輪まで不調が続くがモントリオールベスト8をきっかけにテニスが上向き、試合にも連続で出場できるようになり最終出場大会で優勝。年末100位に手が届きそうな位置まで戻す。

どうですか見事ですよね。

どれも価値が高い追い上げですが、今年がまた特別に素晴らしいのはここ数年の経緯からです。年末に錦織は35歳になります。この年齢で実力を保つのはそもそも、至難の業です。
錦織は特に、2020年以降フルでシーズンを戦っていません。2021年こそ40試合ほど戦いましたが、まとまった試合数をこなしたのはそれ以来のことです。
これがどれだけ30代の選手にとって大きいことか。試合勘もそうですし、何より体力的に相当に厳しい状況だったと思います。
対戦相手の巡り合わせやプロテクトランキングが途中で切れたためチャレンジャー参戦を余儀なくされるなどの事情があったため100位こそ達成できませんでしたが、試合内容を見るとここまで戻してくることは想定以上でした。

モントリオール以降はあっさり負けた試合はほとんどなく、ストロークはキレキレ。サーブも上向きでリターンも堅実。サーブアンドボレー、ドロップ、スライスなど多彩なプレーはむしろ円熟味を増し、ファイナルセットの勝負強さは健在。(ついでにスマッシュもあまりミスしない笑)
問題は、ほぼ体力だけでした。あと若干のディフェンス力低下でしょうか。

ランキングや勝敗数だけでは測れない、確かな復活劇を今年の錦織は見せてくれたと思います。
2021年にも23勝14敗で、11〜20位の選手には勝ち越すという、ランキング以上の内容を見せてくれた錦織ですが、当時は故障してしまいました。
今年は試合内容が同様に良かったことに加え、故障せずに年末を迎えられることが大きな違いです。来年が楽しみでなりません。

まずはコートに立つこと
次に怪我なく試合を終えること
そして勝ち負けではなく内容のある試合をすること
1勝すること
リタイアせず大会を終えること
大会で上位進出すること
連続して試合に出続けること
優勝すること

こうして今年錦織が成し遂げたこと(一部)を並べると、本当に復活したのだなと感慨深いものがあります。
「立った!立った!錦織がコートに立った!」は「クララが立った!」と並ぶ、立った界(なにそれ)の二大フレーズですが、私はその気持ちをずっと忘れずに応援しています(皆さんもきっとそうですね)。
それだけに今年の試合は1試合1試合、いつもに増してハラハラドキドキと感動、そして感謝の気持ちを感じました。
来年もこのスタンスで、「鼻血が出るまで」応援し続けます(次はナルディより早く鼻血出します)。

本日は、試合については書き切れないのでこのような総括的な記事とし、決勝の試合内容については次の記事で書きたいと思います。

64 件のコメント

  • 団長さん、ユーモア溢れつつも真面目な総括記事有難うございます😊
    めでたい、めでたいですネ!錦織選手の久々の優勝。
    そして現時点で故障が無さそうなのもめでたい。
    これからオフシーズンでしょうがイベント目白押しなのかな?できれば身体を休める時間がある事を祈ってます。
    来シーズンの活躍も期待しています。応援できるのがホントに嬉しいです🥰

      引用  返信

  • 団長さんの錦織愛溢れる記事に心が揺さぶられました。
    何から何まで仰るとおりです。
    「錦織がコートに立った!」は「クララが立った!」に等しい、
    という素晴らしく的を得た表現にも思わず拍手。

    >この年齢で実力を保つのはそもそも、至難の業です。>

    の部分、深く頷きました。まさしくそのとおりだと思います。
    これがどれほどすごいか?
    長くビッグ4だけ見てると分からなくなりますが、彼らは人外なのです。
    トップテンに在籍した選手であっても、30代半ばに近づいてもなお
    その実力を維持できる選手はほんとうに数少ないことが分かります。
    その多くが「連戦に耐えられなくて勝ち進めない」「怪我で離脱してゆく」などの状況に追い込まれていきます。
    (ATPには選手生命のことも踏まえて、もう少しゆとりのある試合設定を考えてほしいとずっと思っています。
    せめてGS並みに試合は1日おきにするとか・・。)
    技術のあるベテラン選手がまだまだできるにも関わらず
    引退に追い込まれてゆくのは残念で仕方ありません。

    錦織選手はこれまでの努力が実って、怪我に強い身体と連戦に耐え得る試合体力の両方が身に付きつつあると感じました。
    ほんの1.2ヶ月前までは怪我の心配ばかりしていたことを思えば
    この2週間は夢みたいです。

    錦織選手は決して諦めていませんでした。
    今年後半の試合で見せてくれた高いレベルのプレーに
    「必ずやトップレベルに戻って来るんだ」という強い意志を感じました。
    今まで錦織選手の「不死鳥の様な復活劇」を
    何度も見てきた私たちファンは絶対に諦めません。

      引用  返信

  • ウクレリアンさん
    そのとおりですね。
    応援できる幸せ、噛み締めています。
    ここで同じ思いを共有できることも素晴らしい体験です。
    錦織選手の目標が叶うことを祈りつつ、
    共に応援頑張りましょう。

    リッコラさん

    「”不屈の意志”こそが、彼の最大の才能である」
    「何度も何度でも崖っぷちから這い上がる強靭なメンタルは、試合中どんな状況下にも冷静な表情で 最後には相手を追い詰めて行く姿に表れています」
    「パワーだけに頼らない緩急のテクニックと組み立ての巧さで、屈強な相手をいつの間にか翻弄してしまうのが錦織選手。」

    に、激しく同意します。

      引用  返信

  • 2024年の有終の美を飾るヘルシンキCHの優勝本当におめでとうございます!思えば股関節の手術が終わった後も中々状態上がってこない中、モントリオールMS、東京木下オープンのベスト8でいよいよ俺たちの錦織圭が帰ってきた!という気持ちになってきて、スロバキア、フィンランドの連戦を戦い抜けたことは本人もファンの皆様も大変嬉しい気持ちでいっぱいですよね。

    思えば錦織の試合を若い時から見ていますが、最近は特にバックのスライスがとても効果的だと思います!昔はとにかくバックハンドはクロス、ショートクロス、そして必殺のストレートDTL。といった感じでしたが、近年はここにディフェンスでもありながら攻撃的なスライスを駆使するようになり、見ている側としては更に錦織圭のテニスの魅力が増したと思ってしまいます。今回の優勝を決めたポイントも短い回転のかかったバックのスライスをナルディが持ち上げられず大きくアウトして優勝が決まりました。

    課題のサーブも最近では素人の見立てにはなりますが手首のプロネーションもよく効いていると思いますし、これはヨハンソンコーチの指導が錦織圭に特に合ってきていると感じました。

    何にせよ2025年シーズンが今から待ち遠しすぎる!

      引用  返信

  • 優勝したんですよね。今思い返してもしみじみうれしいです☀️
    終わりよければ全てよしというけど、錦織選手は年末に帳尻を合わせてくるんですね。
    さすが長年錦織選手をウォッチしている団長さまならではの分析。
    あれだけ心配し続けた体力もこのヘルシンキ大会は問題なし。
    寒いから肩とか痛めたらと心配していたのですが、決勝戦まで戦い抜き、
    しかも決勝ファイナルセットでストロークが前セットより伸びているので驚きました。
    いい具合に力が抜けてきていたのでしょうか、最後まで落ちない試合で、
    来年に向けてまた夢が広がります。
    相手に鼻血を出させるすごい試合は、きっと来年への足がかりになるでしょう。
    団長さま、熱のある中ツイキャスお疲れ様でした。
    またチャレンジャーをはじめとするツアーでのポイントの取り方をわかりやすく解説してくださった
    下団さんをはじめとするみなさまありがとうございました。
    100位までもう少しなんですね。
    来年こそは🕊️

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  • ブラティスラバ⓶CHのSFで、サフィウリン選手に敗退した最後に違和感、痛みを抱えているような仕草が見えまして、ヘルシンキCHの1Rまで、「中三日は欲しい」と思いました。
    ただ、そうなりますと水曜日から決勝まで5日連戦になってしまう・・・(ΦωΦ)
    理想は、火、水曜日で1、2Rを戦い、金~日曜日でQFからFを戦う日程がベストかと思いました。
    チーム圭が、どんな決断を下すのか?凄く注目していましたが、中三日を選んだ決断からも、錦織選手の状態が芳しくないと感じました。それでもチーム圭の英断だと信じるのみ・・・
    そこからは、SFまで何と言いますか・・・私も体調不良でして、もう大丈夫だろう💪という勝手な見極めをした時点で睡眠応援、布団の中でスコアのチラ見でした・・・👿🙇‍♂️💀
    決勝戦は、最後まで観ましたが、ファイナル4-0になった時点で思わず目から鼻血状態でした・・・( ;∀;)
    まだまだ書きたいこともありますが、皆の衆と来シーズンも熱烈応援が出来る展望が拓けたことが嬉しい限りです(`・ω・´)ゞ

      引用  返信

  • , さん

    前述のコメントに反応していただきありがとうございます。
    もう、この3年程の間に味わった故障の連鎖の苦しみを考えたら普通は心折れても仕方ないぐらいの状況だったと思います。

    我々は試合に出ている圭さんの姿しか見ていませんが、コーチ、トレーナー、フィジオ、治療に当たった医療関係者の方々、もちろん最愛の家族の愛情にも心を支えられながら、苦しい苦しいリハビリとハードトレーニングを欠かさず積んで来たはずなのです。その見えない部分が殆どだと思っています。
    そこから一歩ずつまずボールを打つこと、試合に出るところから始めて、連戦の疲労に耐えつつ最後はCH優勝🏆まで辿り着く意志の強さとテニスへの愛情を思うと、ただテニスのプレーに対して天才というのではなく、努力の天才なんだと改めて思い直していました。

    昨年6月のプエルトリコCH
    大会中の会食の場面でしたが、ダブルスに出ていた松井選手との会話で、
    “年齢を重ねれば確実に回復は遅くなる、でも技術はまだまだ向上できるんだよ”という言葉に”そうなんだよね!”と強く同意していた姿がありました。
    まだ改善出来る余地を探して努力している、そして少しずつ進歩しながら今に至り、来年は更なる飛躍を求めて先を見つめているでしょう。

    9月の終わり、東京500ルーネ戦敗退直後に前トレーナーの中尾さんがXで呟かれていました。
    “トーナメントで笑って終われるのはたった一人。それを受け止めた上で未来に繋げる。大事なのは信じること応援し続けること、応援し続けることでそれは大きな波になります!” と。
    本当にそう思います、我々に出来るのはそれぐらい、だから心からの応援📣を続けるのみ。
    1人ではなく、ここで皆さんとそれが出来るって幸せなことですね♪

      引用  返信

  • ps.熱は下がりましたか…?ご自愛ください。熱は下がっても錦織圭熱は永遠に…

      引用  返信

  • リッコラさん

    >1人ではなく、ここで皆さんとそれが出来るって幸せなことですね♪

    ですね!!

      引用  返信

  • 団長さま、錦織愛に溢れる記事をありがとうございます。本当になるほど、なるほどと大きく頷きながら(時には吹き出しながら)楽しく読ませて頂きました!

    今シーズン最後の大会を優勝という素晴らしい結果で締めくくった圭選手!本当にすごい人です!連戦の疲れも溜まっていたはずなので、どうか無理をしないで~!と、毎日神様にお願いしながら応援をしていました!
    タフなコンディションの中、最後まで戦い抜き、見事優勝を勝ち取った錦織選手に心からおめでとう!と伝えたいです!

    今までもずっと応援してきましたが、この先もずっとずっと応援し続けます!
    来シーズン、錦織選手にとって最高の1年になることを願っています。

    団長さまも皆さまも体調整えてくださいませ~。

      引用  返信

  • 団長さん、ユーモアあり感動ありのレビュー記事をありがとうございます。
    股関節の手術後は故障の連続で、もがき苦しむ錦織選手を知っているからこそ何としても優勝して欲しい、優勝させてあげたいという錦鯉の思いが結集した試合だったのではないでしょうか。

    『グランドスラムだろうが、チャレンジャーだろうが、錦織の試合であれば幸福度はあまり変わらないようです』
    全くもってその通りですね。
    本当に幸せな時間を有難う錦織選手

      引用  返信

  • 下団さん
    記事のご紹介ありがとうございます。
    ほっこりしますね。

    錦織選手のことを今でも天国で見守ってくれてると思います。

      引用  返信

  • 錦織選手、団長、錦鯉の皆様、
    優勝おめでとう御座います㊗️
    今大会、いろいろな事がありました
    DFやショットミスの連発がありました
    “ニシコリサン”コール連発がありました
    映像の乱れの連発がありました(私は
    「スタードッキリ㊙︎報告」を思い出して
    しまいました)
    挙げ句の果てには対戦相手のはなぢ‼️
    と、そんないろいろを乗り越え錦織は
    見事5試合を勝ち抜いてくれました
    嬉しい!ただただ嬉しい!そして比較的
    観戦しやすい時間帯だったヘルシンキ大会!
    もう最高です!言うことなしです
    来期が本当に待ち遠しいですね
    これからもずっと応援し続けます
    このブログと共に

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。