ヘルシンキ決勝記事第2弾、試合の振り返りです。
タイトルは単なる煽りですw アクセス増えるかな。
そんなに自信はありませんが、なぜ錦織だけがあんな逆転劇を何回も何回もできるのか、最後の方で少しだけ考察しています。
レビューはスコアを改めて付けてからと思ったのですが、時間が取れず記憶頼りなので少し感覚的なレビューになることをお許しください。
まず試合前は私は棄権を覚悟していました。連日の試合となりフルセットも多く、特に前日の準決勝は負荷のかかる逆転劇だったこと、またチャレンジャーであり故障のリスクを取ってまで無理をする場面でもないこと、怪我のリスクと獲得できるポイントを天秤にかけると、棄権の判断は十分あり得ると考えていたためです。
その予想を嘲笑うかのように錦織は平然と会場に現れ、平然と試合を開始しました。思ったより動けており、痛そうな表情もありませんでした。
ただ、テニスの調子は明らかに悪く、フォアもバックもミスが多く流石に連戦の影響はあったと思います。ナルディも優勝に向け前半から飛ばし気味に試合を進め、1stセットはナルディに6−3で取られてしまいます。
2ndセットも3ゲーム目に簡単な攻め球ミスが連続し被ブレイク。この調子では今日は厳しそうだ・・・。誰もがそう思ったと思います。錦織本人以外は。
そして次のゲームをすぐさまブレイクバックするわけですが、「さすが錦織」の一言で片付けてはいけない。内容が濃い。解説します。
このゲームでも錦織はミスしています。しかしリターンダッシュも含め、全てのリターンを前でヒット。「どんどん前に行くぞ」のプレッシャーをナルディにかけ続けます。
まず追い込まれた状況であるにもかかわらず、攻めの姿勢をさらに加速する、この点が普通じゃありません。普通はまずミスを減らそうとしますよね。一歩間違えば無謀になります。しかし錦織には勝算があったと思われます。さらに解説します。
ナルディは序盤から飛ばし気味だったという印象でした。さらに、錦織のミスが多いということでかなり下がり、走って走って拾う戦術に徹し、錦織のミスを誘いました。
これを見た錦織は、じっくりラリーしてミスを減らしていく戦術よりは、ある程度ミスを許容しつつも前に入ってしっかり攻め、その代わり積極的にネットに詰めラリーを短くする戦術を選んだと考えられます。
すなわち、後ろから連続的にストロークの攻め球を打ち、最終的にミスになっていた状況の修正として、少しでも打点を前にすること、そもそもの打つ回数を減らすことで、自分のミスとなる確率を減らし、その分ナルディに勝負球を打たせた(じっくり行かせない)ということです。
この見極めはちょっと鳥肌ものです。まず引き出しが多くないとできません。度胸も必要です。ラリーを短くする分体力は多少セーブできる代わりにクイックな動きが必要とされます。決まるまでドロップを打ったりと頑固な一面もある錦織ですが、見切りをつけたらそれまでのスタイルを潔く諦め、次のスタイルにすぐさま切り替える素早さはやはり、誰にも真似できないものです。
対するナルディは、この錦織のスタイルチェンジに必死についていこうと、それまであまり使っていなかったバックDTLを多用してブレイクピンチを凌ぐなど抵抗します。
そして4−4の錦織サーブで30−30で浮いた球をもらうという最大のチャンスを得ますが、気持ちが先行したか、ここで痛恨のネットミス。さらに4−5からのサービスゲームでは錦織の鋭いリターンにディフェンシブな状況に追い込まれ、たまらずミスを連発。この辺り、経験の差が出たかもしれません。あるいはハイペースでプレーした反動が出たのかもしれません。
ファイナルセットになるとナルディが一気にガス欠となり一方的な展開に。錦織はどんどん力が抜けボールが伸びやかに。錦織にはよくある光景。よくある光景ではありますが本当にいつ見ても驚く・・・。
でも勝負はやはり、セカンドセットの第4ゲームからですね。
ナルディの鼻血アクシデント(先を越された!)にも動じず、とにかくミスしようがピンチを迎えようが、驚くほど淡々と最後までプレーしました。まるで、ずっと先を見据えているかのように・・・いえ、きっと見据えていたのだと思います。そのためにはここで負けるわけにはいかない、負けるはずがないと確信していたのではないでしょうか。それが現れたのが、ナルディの鼻血MTO中のあの「サムアップ」だったのかと。
まだ完全に理解はできませんが、錦織の信じられない逆転劇を可能にしている要素には以下がありそうです。
- 他の選手より圧倒的に多い引き出しの数(ドロップ、スライス、S&V、強打、シコり、リターンダッシュ)
- 諦めの良さ。上手くいかないスタイルを諦める。取られたゲーム、セットを諦める。そしてより有効なスタイルに変更する。(いわゆる、「中の人が変わった」「大将錦織出てきた」)
- メンタルの切り替えの早さ。上とも関連しますが、それまで上手くいかなかったことよりも、これからどうやったら上手くいくかにフォーカスしているのかと思われます。
- ペース配分の上手さ。錦織のファイナルの強さは、ファイナルに力を残しているからとも考えられる。対戦相手は力が残っていないことが多い。逆にトップ10選手に錦織のファイナル力が通用しないことがあるのは、配分していて勝てる相手ではないからと推測。
- 集中力のアップ(特にサーブ)。それまで入らなかった球が何故か入るようになる。決着が近づくにつれ勝利への不確定要素が減ってくるため、雑念が減り勝利に一直線に向かうメンタル(集中力)が形成されているように見受けられる。終盤、突如サービスエースが取れるようになることがある。集中によりイメージ力が高まっているのでは。この力は1試合の力だけではなく、年度終盤にも発揮される。いわゆる鼻血ブログ格言「勝負が見えた時の錦織は強い」「錦織の年末帳尻合わせ」
毎回毎回、貴重なものを見せてもらっている感覚です。最初からそうしてくれればと思わないでもないですが(笑)、発動には多分、条件があるのでしょう。その日のデータとか、相手の状況との兼ね合いもありますし。
チャレンジャーだけど、久しぶりの優勝だしいろんな意味がこもっていて内容も伴っているし、ナルディにだけ鼻血出させるのも悔しい(?)ので、
後からですが鼻血試合に認定したいと思います!!
2ndセット途中から7ゲーム連取!
いつぞやのフェデラーみたいに軽やかにシバキ倒す姿は痛快でした👏
こぉ引用 返信
つ、ついに、鼻血試合認定ですかっ⁈やったー!鼻血いただきましたよ、錦織選手!!!
1セット目は疲れからかミス連発。2セット目最初のサービスゲームで気合い入れ直してミスゼロ、ドロップやBHDTLやジャックナイフなどでラブゲームキープしたのが反撃のノロシに思えました。でも次はミスが複数出て被ブレーク、まだ不安定だった。
やはり、団長さんの詳細解説された第4ゲームが勝負の分かれ目だったんですね!
決め球ミス出しながらもミスを恐れず前へ出て果敢に攻めた。
一球毎の配球もそうだけれど、試合全体を見通しても、一見無謀に見えるが実は非常によく考え抜かれた戦術(理詰めの攻めにいつも感心する)を瞬時に修正しながら選び取る能力はずば抜けていますね。
前に踏み込むことで自分のミスを減らす効用もあったのか、なるほど!
ほんと、ミスしてもミスを長く引き摺らない、切り替えの素早さは誰にも真似できない、見習いたいです。
第8ゲーム、ナルディのチャンスボール痛恨のネットミス、あそこをナルディが取っていたらと思うと、ゾッとします。ここも大きな勝負の分かれ目でしたね。第2セットをタイブレークに行かずに取れてよかった。
ファイナルセットはそうなることを見越していたかのように、軽やかに伸びやかにプレーしていましたね。
恐るべし、錦織圭!
振り返ると二度楽しいのが錦織圭のテニスですね。
「錦織の信じられない逆転劇を可能にしている要素」5ヶ条はどれも納得です。不思議な力を分析していただきありがとうございます。その一つでさえ身につけることは難しいのに、やはり天才だ、この選手は!と思いました(もちろん、努力の賜物でもあるのだけれど)。永久保存版にしておきます。
体調もすぐれずまたご多忙の中、力のこもった素晴らしいレビューを届けていただき、感謝いたします!
ウクレリアン引用 返信
わあ、待ってました! レビューその2
そして鼻血試合認定、うふふ。
思いましたよ、「今日はダメそう、見るの辛いからやめようか」・・って。
でも今年最後の試合なんだから見届けなきゃって言い聞かせつつ、
途中コーヒー淹れに行ったりトイレ行ったりの〝ながら見〟したりして。
優勝の後のXでハモさんが、鼻血MTO中の〝サムアップ〟上げてたから、
どこだどこだ、そんなことしてたかって、わざわざ見直しました。
カッコええなあ。
団長さまのまとめた5つの要素を読ませていただき、スッキリです。
ウクレリアンさま
「世界へはばたけ、プロテニスプレーヤー~」見させていただきました。
この少年がねえ・・
昨日は2019全豪カレーニョブスタ戦を思い出し、
5時間なら、プチ断捨離にちょうどいいわ、と視聴。
今さらですが、天才、唯一無二の選手ですね。
他の選手には見られない(←錦鯉だから?)試合中の澄んだ瞳が好きです。
GOGATSU引用 返信
錦織選手の試合に続いて、団長さんの考察にも鳥肌がたちました。 そうそう、それ!と首ブンブン縦振りです。
私は緊迫した試合での錦織選手の(蛮勇ではない)勇気に、日々を生き抜くエネルギーをもらっています。 まあ同時に心臓と胃はダメージ受けていますが😅
ともかくたくさん試合が観られて、締めくくりは優勝!
感謝しかありません。
まほ引用 返信
レビューありがとうございます。
ギリギリまでもつれる試合でも勝ち筋が見えてる時は本当に負けないですよねこの人…
ただ、その勝ち筋を見つけるまでにちょっと時間がかかるのがやっぱり弱点ではあるんでしょうね。自分のテニスで押すのではなく相手のテニスを攻略するタイプの選手の宿命ですかね…
まままま引用 返信
団長さん、熱いレビュー、そして鼻血試合認定ありがとうございます。
今大会での錦織選手を見ていて
彼がランキングを駆け上がっていた若き頃
外国人解説者たちが、彼の冷静な戦いぶりを形容して、よく
“as cool as a cucumber”と言っていたことを思い出しました。
そして、試合序盤で押されてセット落としても、戦いながら相手選手の情報収集していって
ついには、相手の隙をついて、逆転の錦織、ファイナルセットの錦織、が
彼の真骨頂であったと思います。
今大会の準決勝、決勝は、「そうは言っても、年齢による体力的なことを思うと
もう、その戦い方は・・・」という思惑を見事に裏切ってくれました。
本当に凄い選手ですね!
また、今回の活躍で、昔懐かしいお名前の書き込みもたくさん見られて
それも嬉しかったです。
みんな、しっかり見守り続け、応援し続けていたのですよね。
来年もどうぞよろしくお願いします!
chrisちゃん引用 返信
団長さんのレビューに全面的に共感します。
ほんと、仰るとおりですね。
「錦織の信じられない逆転劇を可能にしている要素」の箇条書き、
団長さんの分析が鋭い!
もともと「他の選手より圧倒的に多い引き出しの数」は誰もが認めていましたが、
「上手くいかないスタイルを諦める。取られたゲーム、セットを諦める。そしてより有効なスタイルに変更」し、
「それまで上手くいかなかったことよりも、これからどうやったら上手くいくかにフォーカス」という切り替え力が彼の持つ「性格的な強み」なのだと思います。
この様な離れ技をやってみせることが可能なのは、
引き出しの多さに加え、彼に備わった3次元的視野の広さと
「試合の流れを把握し、なおかつその先を見通す勘のよさ」や
どんな時も「冷静で動揺しない、感情的にならない」といった
錦織選手ならではの天性の素質が関わっているのだと思います。
錦織選手がもしも大谷翔平の様な日本人離れした恵まれた身体を持っていたら、ビッグ4の一角を占めてビッグ5となっていたかもしれません。
でもそうではなかったから、身体的に小柄でテニス選手としては不利とも言える条件であったからこそ、
こうした錦織選手ならではの「あり得ないような逆転劇」が見られるのだということをつくづく感じます。
来年もこのワクワクドキドキがまた見られるのが嬉しいです。
(WOWOWの撤退で、どこならツアー大会が視聴できるか?という
問題はありますが・・。)
風引用 返信
ウクレリアン,
ここまでくればやはり経験の差がもろに出てましたねナルディの焦り気味の様子が見て取れました最後はナルディはコーチに錦織選手がワンゲームくれたんだよと言われて観念したみたいにみえました
お疲れ様でした、あまりの素晴らしい試合に感動しましたこれからの試合でもこの調子で頑張って下さい
みみ婆さん引用 返信
団長さん、レビュー記事第2弾ありがとうございます。
試合録画を何度も見返しながら興味深く読ませてもらいました。
戦略というか駆け引きというか、「試合中に錦織選手はどんなことを考えながらやっているんだろう。頭の中を覗いてみたい。」と常々思っていましたが、団長さんの解説で見れたような気がします。
信じられない逆転劇を可能にしている要素を書き起こしてもらったことで、これら全て兼ね備た錦織選手の凄さ希少さが改めて分かりました。
だからこそ、はじめは苦戦していても、徐々に形勢が逆転、まくし立てるような攻めが始まり(団長さんの言う攻め達磨ですね)、最後はあれよあれよという間に勝ってしまう。なんてことができるわけですね。
おけい引用 返信