悔しいが嬉しい。戻ってきた全盛期並みのプレーを最後まで続けられるかが今後の鍵(2024木下ジャパンオープン準々決勝 ルネ戦レビュー)

2024 Tokyo (ATP 500)
Quarterfinal
Holder Rune[6] def. Kei Nishikori, 3-6,6-2,7-5

結果だけ見ると悔しさも残りますが、対戦相手の強さと出来、錦織のプレー内容を考えると嬉しさの方が上回ります。
ほんの少しだけ届きませんでしたが、まだ錦織にこれだけの力があり、かつこれからもさらに良くなる希望があります。8月のモントリオールベスト8以降、いいプレーは続いていましたが今大会でさらに良くなりました。

第1セットは圧巻の内容で、リターンも返すしストロークはライン際(ワイン際ではない)に落ちまくるし、何よりノーミス。ビッグサーブも出て完全に全盛期の試合内容。

対するルネは。錦織の速いテニスに対抗すべく、強打で状況を打破しようとしてきました。
サービスゲームはその方針でなんとか第4ゲーム以降はキープしたのですが、リターンゲームでミスが出て錦織が1stセットを奪います。
ただ序盤のような一方的に錦織が攻めるモードではなく、ルネから攻める展開も増えてきていましたので、第2セットはもっと苦戦するだろうと予想しました。

2ndセット第1ゲームは一つのターニングポイントになりました。ラインいっぱいのボールが多く、第1ゲームながら両者3回ずつくらいチャレンジを使います。それだけこのゲームの重要性を感じていたのでしょう。

攻めてはカウンター、カウンターを打たれてはディフェンスでまた戻すといった一進一退の力の入ったラリー。錦織はBPを握りますが素晴らしいリターンにそれ以上のカウンターが返ってきて、ブレイクできませんでした。
このゲーム、ルネはセカンドで178khmを放つなどリスクを取ってきました。一歩間違えれば一気に錦織に持っていかれるところを強引に流れを変えにきた感じです。結果としてこれが功を奏しました。

錦織のサービスゲームは引き続き好調ではあったのですが、1stセットはミスしていたルネのパワープレイがどんどん入るようになってきて、2−3からのサービスゲームでは攻めきられてしまいます。とにかくリターンが良かったですね。これは最後まで続きました。錦織のサーブももう少しパワーが欲しかったかもしれません。

この辺りから錦織が足を気にし始め、動きが落ちます。序盤と比べるとボールも速度が少し落ちました。1stセットは全く見られなかったミスが出て、そのままずるずると2−6で取られてしまいます。

通常ならここで勝負ありで、ファイナルセットはジリ貧になっていくものですが・・・コートに立っているのは錦織です。
何十回も見た錦織劇場を期待しました。
ボロボロなのに何故か取る。ここぞの集中力と戦術とメンタル。
今回も見せてくれました。
1stセットほどではないものの動く錦織。声を出しながら振り抜く錦織。諦めず追いかける錦織。会場との一体感もあって、徐々にルネのメンタルを追い詰めているように見えました。
2ndセットよりさらに力でどうにかしようと、やや打ちすぎの傾向が見えたので、錦織にチャンスが来そうに思えました。

一方で1回戦から見てきてルネの強さの一つはディフェンス力だと思いました。ビッグサーブと強いストロークに目が行くのですが。
2回戦までは決まっていたり甘く返ってきた球をしっかり返してくるのです。ちょっとメドベージェフっぽい感じです。そこが錦織の体力を削り、最後に効いてしまったかもしれません。

第7ゲームに錦織のカウンターパスが決まり大きなガッツポーズが見られた時、会場のボルテージは最高潮。私も勝利を確信しました。しかし・・・
5−3で迎えたMPではルネのビッグサーブで凌がれ、5−4からのサービスゲームではストロークのミス。勝利への執念を見せポイント挽回するものの、痛恨のブレイクを喫しました。
ただ、本当の凡ミスは最後の1本だけで、それまでは2ndセットから持続するルネのリターンの良さが光ったと思います。凡ミスとも取れるし、押されてのミスにも見えました。そして、体力がもう少し残っていればミスすることもなかったと思います。
5−5でもBPがあったのですがここもビッグサーブで凌がれる。
最後のゲームも必死に抵抗しますが、とにかく体力的にきつかったのだと思います。

勝てる流れではあったし、勝てる内容だっただけに悔しさもありますが、それでもルネ相手にここまで熱い試合を見せてくれるとは、冷静に考えたらすごいことです。パリでは全くいいところなかった試合をしてしまってからまだ2ヶ月です。

とにかく8月以降、いいテニスができているので本当にフィジカルだけです。フィジカルとは、故障もそうだし体力不足もそうですが、故障に関しては痛みは確実にあると思いますが、試合はまずまずこなせているのは本当に素晴らしいことです。
体力不足は、本人もインタビューで敗因に挙げていましたし、故障の影響で十分な体力トレーニングがこなせていないのだと思います。
年齢のこともありどれだけ戻るかは未知数ながらも、今よりは向上はしてくれると思うので楽しみです。
モントリオールを見ても、3試合まではなんとかいける状態なのだと思います。これから優勝を期待するとなると5試合耐える体力が必要となり、そのためには年末にトレーニングする必要が出てくると思いますが、なんとか年内に100位を達成して(あと200pくらい)来年全豪からの爆発に期待という感じでしょうか。

104 件のコメント

  • みなさまコメントありがとうございます。
    海外出張中のため記事書けていません(試合もちょっとしか見れていません)
    2回戦も試合途中に日本につく感じですので後になってしまいますが、レビューは書きますのでよろしくお願いします。

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  • ナボーネ戦のフォアハンド、良かったですね。
    マジで過去最高かもしれない。
    休んでる間にかなりフォアハンド改善してきましたね。
    なんだろう、以前より脱力して前に振りきってる分、wonderful strikeしているのは間違いないが、具体的に何を変えた結果そうなってるのか気になる。
    少し握りも薄くした?グリップ長く持つようにした?
    団長がよく言ってるテイクバックを低くしてる?
    オープンスタンスを少なくしてクローズ多めにしてる?
    明らかに振り上げフォアが少なくなって体重が乗ってる。
    身体さえ持てば技術的には今が一番かもしれない。

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  • 団長さん

    了解しました。(‘◇’)ゞ
    安心してください! 団長さんのぶんも応援しながら待っています。
    道中お気を付けてお帰り下さい。

    風さん

    最後サーブを打って勝利が決まった瞬間ラケットをついて体を支えていましたし、ベンチに座ったとき股関節を押さえていましたし、相当しんどそうでした。
    よく頑張って勝ち切ったなあと思います。凄い選手です。
    次の試合も、身体の無事を祈りつつ応援あるのみですね。

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  • おけいさん
    そうですね。私も
    勝利が決まった瞬間のラケットをついて体を支えて居た姿が目に焼き付いています。
    あの姿を見て、「どれほど身体が一杯一杯だったんだろう。。。」
    と思いましたもん。
    「身体の無事を祈りつつ応援あるのみ」ですね。

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    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。