チリッチとのビンテージマッチを制す(2024木下ジャパンオープン1回戦)

2024 Tokyo (ATP 500)
1st Round
Kei Nishikori def. Marin Cilic, 6-4,3-6,6-3

6年ぶりのジャパンオープン、対戦相手は2014全米決勝の対戦相手、チリッチ。
チリッチとは全米決勝後も何回も対戦していますが、それでも毎回特別な思いで臨むカード。
今回はさらに、共に怪我に苦しみ復帰した後で200位前後にランキングを落としながら復活途上にあること、東京という舞台、いきなり1回戦での対戦ということでますます注目が集まるカードとなりました。

チリッチは言うまでもなく212位というランキングで語れるはずもないスーパースターであり、先週の杭州250を優勝していることからも調子の良さが伺え1回戦の対戦相手としては強敵だったのですが、私は何も知らない選手より対処しやすいのではないか感じていました。
それはチリッチにとっても同じだったかもしれませんが、少なくとも今になって全く知らないようなテニスをしてくるとは思えません。

勝つ時は接戦で勝ち、負ける時はストレートで負けるパターンが多く、まずは競ることが大事でした。競ることさえできれば、終盤に手駒の多さで錦織が上回る展開を予想できました。

配球としてはバッククロスの打ち合いから錦織が先にストレートに仕掛けるパターンが多く出れば錦織ペース。チリッチのフォアクロスが決まり始めればチリッチペースになるだろうという予想がありました。

試合は満員の観衆を前に、1回戦とは思えない異様な盛り上がりの中始まりました。有明の全員が錦織に「おかえり!」と声をかけているようでした。試合が始まってもいないのに、少しエモーショナルになりました。

試合が始まるとその感傷的な気分は吹っ飛びます。チリッチのサーブが強く、一気に現実に引き戻されます。「ああ、チリッチだ。。。」完全に思い出しました。

錦織はダブルフォルトでスタートする緊張のサービスゲームでしたが、最初のバックDTLが決まるとストロークで優位にゲームを進めます。
チリッチのセカンドサーブを攻略できそうで攻略できないもどかしい場面がありながらも、サービスは好調で180kmhのノータッチエースも飛び出します。

チリッチのフォアのカウンターが見ている者の恐怖を煽ります。100%決まるわけではなくミスもあります。しかしウィナーとミスのバランスが少しでも崩れると一気に持っていかれるし、一気にこちらが有利にもなります。ちょうどどちらにも転びそうなバランスで、恐怖だけ増幅されながらゲームが進んでいきますが、錦織もサービスゲームは完璧。フォアはしばけているしバックのダウンザラインはミスしない。

試合が動いたのは4−4から。バックの打ち合いからのストレートへの展開、そしてBPでのフォアへのサーブを読みブレイク!
プレビュー記事で期待した通りの展開は、錦織も十分分かっていたのでしょう。1stセットは錦織。

2ndセットはDFもあり先にブレイクされるも、すぐさまブレイクバックして今日は錦織のものか!と思われましたがチリッチが底力を発揮。やはりフォアのカウンターが素晴らしく、ものすごい角度にものすごいスピードで打ち込んできました。
錦織はセカンドサーブからポイントが取れず、再びブレイクされた試合はファイナルセットへ。
チリッチのウィナーとミスのバランスが上振れしたのがこのセットを取られた要因でした。
これが錦織とチリッチの対戦・・・お互いに良いところを出しての接戦は、緊張感がありながらも非常に心地良いものでした。

ファイナルセットは最初のゲームでピンチを凌いだことが勝ちに繋がったと思います。
テニスは良いのですが体力はまだ戻り切っていないようで、イタリアCHでも(痛み含めて)試合後半に動きが落ちることがありました。
このファイナルセットでもそんな感じがあったのですが、第1ゲームをキープしたことで徐々に、流れが変わっていきます。
チリッチも先週の疲れがあったのか、恐怖のカウンターの威力はそのままですが、ウィナーとエラーのバランスが少しずつ変わってきました。

そこでチリッチはサーブに頼ろうとしたと思います。
錦織3−2からのゲームはチリッチがキープしたものの、大きくフォルトするなどサーブで決めたい、サーブに頼りたいという気持ちが出ていました。
それが次のサービスゲームで仇となり、DFで錦織がブレイク! 錦織のリターンもよく、ミスのないバックDTLで仕留めるパターンに自信を持っていました。
セカンドサーブからは最後まであまり取れませんでしたが、1stサーブが非常によく7本のサービスエースを放ち、最後は錦織が勝ちました!

試合を通じて、錦織もチリッチもクオリティ高いテニスをしてくれたと思います。
体のことを心配していましたが、膝を押さえる場面はあったものの、動きは問題ありませんでした。
ただ、試合後半の体力はまだ戻り切っていないようにも見えました。うまく手駒の多さでカバーしていましたが。

この試合の好調さを支えたのはサーブとバックDTLでした。サービスゲームが安定すると錦織は強いです。チリッチのフォアカウンターを何度も食らいながらも、負けじとウィナーで対抗することができました。

とても200位同士の対戦内容、1回戦の内容ではなく、雰囲気もGSの決勝のような感じで最初から最後まで興奮しっぱなしでした。
7月までは当分、復活は無理だろう。とにかく試合に出てくれさえば満足。勝ち負けなんてどうでも良いと思っていたことを考えると、短期間でものすごい復調ぶりだと思います。
体の不安は拭いきれませんが、それでも大会にはコンスタントに出られるようになっている中、このようなテニスを見せられては期待を高めずにはいられませんでした。

チリッチと共にこれからもずっと長くテニス界を盛り上げて(若手に対抗して)ほしいです。

3 件のコメント

  • 団長、1本目のレビューうp、ありがとうございますm(_ _)m♥
    何やら、「3本は無理❗️」と言う声も聞こえて来ましたが😏

    本当に、決勝戦のような緊張感に溢れた試合でしたね♥
    ドキドキしながら、声をからして応援しました(;^ω^)
    全盛期のような圭が見れて、ホントに幸せな時間でした😭😭😭
    しかも最後は、先週優勝したチリッチに勝ってしまうなんて❗️❗️❗️(*^^*)♥
    もう、マッポの前から号泣でした😭😭😭😭😭
    ありがとう圭(〃∇〃)♥♥♥

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  • 素晴らしい試合でした。
    感無量という感じです。
    (勝ったから言えることかもしれないけど・・。)

    この対戦が決まった時、2015年のジャパンオープンでの対戦を思い出しました。
    (あの時はフランスのペール選手に全米1回戦負けを喫して、
    ジャパンオープンでもチリッチ戦勝利の後、またペール選手に負けてしまった、という曰く付きの年でしたが・・。)

    チリッチ選手がジャパンオープンの直前に、250の大会で優勝していることも嬉しく思います。チリッチ選手も怪我を乗り越えて、
    復活してきていることが本当に嬉しいです。
    錦織選手のライバルと称されたチリッチ選手とラオニッチ選手、
    錦織選手も含めると三人とも、怪我に苦しんでいるんですね。
    厳しい世界です。
    それでも怪我を乗り越えてこうして素晴らしい試合を見せてくれて、感動しまくりです。

    チリッチ選手のプレーを見て、身長は大きいけれどサーブだけじゃなくてストロークもうまい選手だったことをあらためて実感しました。
    フォアのカウンター、かなり喰らいましたね。
    第3セットはさすがに連戦の疲れもあってか、少しサーブのコントロールが甘くなってましたが、そこをすかさず見逃さなかった錦織選手は、やはり勝負師です。

    この試合は永久保存版です。
    録画を繰り返し視聴して楽しみたいと思います。

      引用  返信

  • 団長さん、レビュー記事ありがとうございます。

    私もこの試合を生観戦しておりました。
    会場の大歓声、雰囲気、最高でした。皆が錦織選手の試合を待ちわびていたんだなあと思いました。
    チリッチ選手と聞いて一番に頭に浮かぶのは2014年の全米決勝戦です。
    二人の攻防を夢中になって観ていたら、あの頃にタイムスリップしたような気持ちになりました。
    今は二人共ケガに苦しみ復活途上なのですが、そんなことを忘れてしまうほど二人のテニスが素晴らしく、ここまで戻すのにどれだけの努力をしてきたんだろうと思ったら、またまた涙が…。
    「涙溢れて何も見えない」状態が続き、試合中、何度ハンカチで目頭を押さえたことか。(:_;)
    この試合は錦織劇場(ビンテージ編)として永遠に記憶と記録に残しておきたいと思います。

    最後にチリッチ選手、連戦でお疲れの中来てくれてありがとう。

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    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。