52%のポイント獲得率があればかなり有利

一昨日の記事「テニスは波乱の起こりにくいスポーツである」では、簡略化されたモデルを使い、60%の確率でポイントを取れるならば3セット、あるいは5セットマッチでまず負けることはない、ということを示しました。

一昨日は選手A vs 選手Bの試合で選手Aが60%の確率でポイントを取る、という仮定で行いましたが、本日はさらに一歩進め、この60%という確率を変化させたとき、試合の勝率がどのように変化するかを調べてグラフにしてみました。

といっても安心してください、春日の心はあなた一色ですよ。

今日は数式は出さず、分かりやすいようにグラフを出すだけですから。

逃げないでね。

まずはゲームを取る確率です。

ポイント獲得率とゲーム獲得率の関係

ポイント獲得率が80%くらいあれば、1ゲームも落とさずにセットを取ったり3セットマッチで勝てそうな感じです。

一昨日見たように、ポイント獲得率が60%でも平均的には4ゲームに1ゲームしか落とさない計算になります。

注)本当はサービスゲームとリターンゲームではずいぶんポイント獲得率が異なるものですが、ここは簡略化したモデルということでご了承ください。

次はセットを取る確率です。

ポイント獲得率とセット獲得率の関係

グラフの形としては最初のグラフ「選手Aがゲームを取る確率」と同じですが、確率の変化の仕方が急になっています。

ポイント獲得率が60%もあれば、ほとんどセットすら落とさないということが分かります。

ポイント獲得率が60%というのは五分五分の状態から見るとほんの10%のアップですが、試合の勝敗の行方としてはものすごく大きい差であることが分かります。

続いて5セットマッチの勝率です。想像つきますよね?

ポイント獲得率と5セットマッチ勝率の関係

さらに確率が急な変化をしています。

ポイント獲得率60%だと5セットで負けることは1000試合に1回程度と、「めったに起こらない」ことであることがわかります。

しかしこのグラフだと正直、変化の様子が良く分からないので、横軸が40%~60%の部分を1%刻みで見てみました。

ポイント獲得率と勝率の関係

この領域では、「Aがゲームを取る確率」はポイント獲得率が上昇するとともに、直線に近い形で上昇していきますが、

ポイント獲得率の差がじわじわと積み上がった結果となる3セットマッチあるいは5セットマッチの勝率となると、ポイント獲得率が1%上昇するだけで敏感に変化していく様子が分かります。

ポイント獲得率をイーブンの状態からほんの2%だけ高めて52%にするだけで、

3セットマッチでは70.3%
5セットマッチでは74.7%

という高い勝率を得ることができます。

勝率70%を超えるということは大体、2勝1敗あるいは3勝1敗ペースとなりますから、32ドローの大会だと平均して準々決勝から準決勝に進出できる計算になります。

ATPツアーレベルでこのぐらいの勝率を達成することができれば、トップ10付近に来れるでしょう。

「ポイント獲得率52%」というのは実はそのくらいすごい威力があるということです。

注)「ポイント獲得率52%」だからと言って「実際に試合をすると52%のポイントを得る」とは限りませんのでご注意ください。
  「確率」と「実際の結果」は必ずしも一致しないということは、サイコロなどを考えればお分かりのことと思います。
  サイコロで1の目が出る確率は1/6ですが、「6回振ったら1回だけ1の目が出る」とは限りません。 

8 件のコメント

  • 前回に引き続き、頭がクラクラしてきそうですが
    「なるほど!」と思ってしまったのは気のせいか?

    《逃げないでね》って・・・笑っちゃいました。

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  • はい、逃げませんでした!
    目で見るグラフ、直感的に凄く分かりやすかったです。
    実力の僅差が積み重なって、セット単位、マッチ単位となるにつれ大差となる様子が見て取れました。
    こういう分析、テニスの意外な側面が見えて面白いですね。
    ・・・高2の夏休み明けの数学テストで0点をとった虎馬が薄れて行く。

      引用  返信

  • ふっふっふ もう逃げませんよ。
    グラフはとても分かり易い!
    1ポイントの重み感じますね。

    >春日の心はあなた一色ですよ
    グラフよりもこのフレーズが気になってしょーがないです。

      引用  返信

  • karukaruさん

    こういうギャグは、旬のうちはおもしろいのですがしばらく経って後で見るとすごく恥ずかしいのが難点です。

      引用  返信

  • >サイコロで1の目が出る確率は1/6ですが、「6回振ったら1回だけ1の目が出る」とは限りません。

    600回振ったら1の目が100回に近い回数で出るかな?
    だちょ、検証おねがいしま~すw
    そんな暇ぢゃないか~ww

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  • reikoさん

    試行回数が増えれば増えるほど、実際の結果も1/6に近づいていきます。これを「大数の法則」と言います。

    600回くらいふればおそらく、1の目が出る回数は100回にかなり近い数字となるでしょう。

    でなければ、そのさいころは歪んでいますw

      引用  返信

  • いやだんちょ素晴らしい…

    僕昔学校で「数学研究会」なるものに入っていたので
    数学大好きなんです。
    そこまでできないけどさwwww

    いやー、にしてもだんちょすごいですね。数学の成績よかったでしょ!?
    しかも計算の正確さだけじゃなくこのブログをご覧の
    方なら誰にでもわかりやすく書いていらっしゃるのが
    またもや素晴らしいところです。

    あとさいころネタですが、トリビアかなんかでやってましたが
    「2」の目より「5」の目がたくさん削られてるんで
    重心が低いほうにいきたがるんで5のほうが多く出るとか
    やってましたよwww
    まあ、そんな差は微々たるものでしょうがね…

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  • iさん

    影響あるほど重心がずれるんですねwww
    それはトリビアだ。

      引用  返信

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    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。