サーブの確率を高める5つの要素とは

「サーブの確率を上げたい」

これはアマチュアプレーヤーの悩みの中で最も多いものの一つでしょう。

一番良く聞く解決策は「スピンをかける」というものだと思います。

男性ですと、スピンサーブを打つことで確率を高めようとする人が多いです。
しかし「スピンサーブはこすり上げるように」という既成概念に囚われてしまって、実際に上にサーブを打ち上げてしまっている人がいます

これでは「打てば打つほどロングのフォルト」の状態になってしまい、スピンでせっかくボールを抑え込んでも確率が上がるはずがありません。

また、スピンサーブは体の動きがダイナミックになりますし、フラットサーブと比較してトスも左&後ろに上げる、とされていますので、「毎回同じように打てるか?」すなわち再現性の面からは難度が高いと思います。

スピンをかけるために他の要素を犠牲にしてしまっているとしたら、これはもったいない話です。

本記事ではサーブの確率を高めるためにはどうすればよいかをロジカルに考えてみたいと思います。

サーブの確率を決める要素は実は以下の5つしかありません。

(1)打点
(2)打ち出し角度
(3)ボールスピード
(4)ボールの回転
(5)再現性 

(1)打点

高ければ高いほど入りやすいのは簡単に分かると思いますが、打点を前にすればするほど入りやすいということは意外と忘れがちです。

ビギナーの方々は打点が後ろになりすぎる傾向があるように思いますので、意識して打点を前にするのが良いと思います。

ボールを打たずにトスを上げてみて、ボールがベースラインの50cmくらい内側に落ちるくらいの打点で打ちましょう。
私はもっと前にトスを上げています。

では「むちゃくちゃ高い&むちゃくちゃ前の打点」が良いのか?といえばそうでもないです。

(5)で説明する「再現性」に絡んできますが、無理な打点は安定性に欠けますし、最も高い打点と最も力の入る打点は一致しないからです。

力が入って、かつ体の使い方に無理がない範囲で高い&前の打点を探しましょう。

(2)打ち出し角度

どんなに背が低い人でも、ネットよりは高い打点でサーブを打つはずです。
「背が低いから、速いサーブは入らないのでは・・・」と心配になって、恐る恐る山なりサーブを打っている人を見かけますが、これはもったいない話です。

 打ち出し角度は水平より上にする必要はありません。逆に、速いサーブを打つときなどは打ち下ろすくらいの気持ちで良いと思います。

「速いサーブ=前方へのベクトルが大きい」ということですから、下方へのベクトルも同じように増やしてやらないと、合成ベクトルの向きを保つことができません。

難しい言い方をしました。すいません。

簡単な方法を教えます。

ネット上に仮想ターゲットを置きます。

実際に虫取り網とか、何かを持ってもらうのもいいです(サーブ当たらないように気を付けてください!)。

そこに向かって思い切りサーブを打ちます。ターゲットを持っている人は、よけます。

ターゲットのあたりを通ったサーブは、必ずエリア内に収まることが実感できると思います。このやり方では、決して「打ち上げサーブ」にはならないはずで、「必ず解はあるのだ」ということが分かってもらえると思います。

また、ネットはセンターが低くなっていますからセンター付近を通すというのも効果的です。

(3)ボールスピード

当然ながら遅いサーブの方が物理的には入りやすいですが、よっぽど速いサーブでない限り「サーブが速すぎて入らない」という事態にはなりません。

逆に適度にスピードを出した方が(まあ、「適度」がどのくらいかが問題なのですが)安定すると思います。

これはまた(5)の再現性と関連してくるのですが、あんまり力を抜きすぎると今度はその加減のコントロールが難しくなるからです。

逆に全力打ちもまた再現性の面で問題がありますので、7,8割くらいの力がちょうど良いと思います。

(4)回転

回転には縦回転と横回転があり、縦回転が中心だとスピンサーブ、横回転が中心だとスライスサーブになります。

スピンサーブはネットを越えてからボールがお辞儀をして落ち、ネットの高いところを通してもサーブが入るようになるので安全性が高まります。

スライスサーブは横回転なので物理的にボールが入りやすくなるという効果は限定的ですが、同じ力でフラットサーブを打ったときと比べてボールスピードを抑えることができますので、結果としてフラットサーブより入りやすくなります。

スピンにしてもスライスにしても、「力を入れて打っても大丈夫」という安心感が確率を高めます。

特にスピンサーブは「強打すればするほどスピンがかかって入りやすくなる」という特性を持っていますので、(5)で説明する再現性さえクリアできるのならば確率重視のサーブとしては最適です。

ただし女性にとってはフォーム的に難しかったり、体力も使うので簡単なスライスサーブの方がお勧めです。

(5)再現性

すでに前の項目では何回か出てきているこの言葉、私はサーブの中で一番重要な要素だと思っています。

私は1stサーブでスピンサーブを打つことはあまりありません。理由は再現性が悪いからです。

逆にフラットサーブは物理的に入りづらいですが、私の場合、毎回同じように打つことができる、つまり再現性が高いので主力として使っています。

まあスピンサーブもしっかり訓練すれば再現性良く打てるようになるはずなのですが、どうしても体の使い方がダイナミックになってしまいますので、フラットやスライスより再現性が良くなることはあまり考えられませんし、体力的にも3セットマッチの後半までボールのクオリティが保てる自信がありません。

(注:個人の資質に依存しますので、私の場合ということで了承ください)

再現性の高いサーブを打つには少しの工夫があれば十分です。

基本は「体の動きを最小限に」です。
「ラケットの動きを最小限に」ではないことに注意してください。ラケットの動きを安定化させるために、余分な他の動きを排除するということです。

膝を曲げ過ぎない

膝の曲げは打点を稼ぐため、スピンをかけるためにに使われます。
それに膝を曲げた方が多少はスピードが出るでしょうが、寄与は小さいです。
全く曲げないのもまたやりづらいでしょうから、軽く曲げるくらいがちょうど良いです。

トスは高く上げ過ぎない

高くトスを上げる人は「力を溜める」タイプのサーブを打ちたがっていませんか?再現性には寄与しません。 

反り過ぎない

これもパワーを出すため/スピンをかけるための動きで、再現性には寄与しません。

ジャンプしすぎない

これも同様に打点/パワーのための動きで、再現性には寄与しません。

トスを前目に

トスを前にすることで簡単にパワーが出ます。他で犠牲にしたパワーを十分補うことができます。
また、前にすることで腕の動きが制限されなくなります。 

コンパクトなテイクバック

真中に当たりやすくなりますし、タイミングが取りやすくなります。
再現性に寄与します。 

肘を高く保つ

最終的な打点では肘は高くなっているはずです。だったら肘の上下がない方が再現性が出るはずです。

といったところです。

まあ文字で説明しても分かりづらいとは思いますが・・・。参考になれば幸いです。

最後に理想的なサービスフォームを持った選手として、ナブラチロワとイワニセビッチをあげておきます。

この2人(ともに引退選手ですが・・・)のフォームは無駄がまったくありません。

疲れにくいフォームですし、調子の波に左右されません。というか、左右されようのないフォームです。

サンプラスは世界最高のサーバーですが、逆に一般人がマネするには難しい背中の反り、肩の可動域をしています。
でもあのサーブは憧れなんだよな・・・。 

12 件のコメント

  • 団長さん ありがとうございます
    とても参考になりました。
    今セカンドサーブで悩んでいたので・・・・
    僕はスピンサーブをがんばっていましたが、この記事を読んで非力なのでスライスに変えてみようと思いました。
    (スピンでうまく行ってなかったし・・・)

    初めて論理的な記事を最後まで読みましたwww

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  • ナブ婆の打ち方はサーブ以外もホント勉強になります。
    今でも時々見てます。
    イバニセはあの構えとクイックが個性的ですが、個々の
    動作は基本に忠実ですよね。
    サンプラスは誰しもあこがれるサーブですよね。
    でもあの肩甲骨の動きは人外です。
    私個人的にはエドベリのスピンサーブが好きでした。
    ことサーブに関しては昔の選手のほうが、それぞれ
    個性があったと思います。ベッカーとかマックとか・・

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  • テニス少年さん

    スピンサーブがダメだというわけではなくて、ここに書いたようなデメリットもありますよ、という感じで読んでいただければいいと思います。
    スライスサーブの方がお手軽なのは間違いないので、まずはスライス、というよりコテコテのスピンというよりはスピンとスライスの中間の感じの「トップスライスサーブ」を身につけるようにして、並行してスピンサーブもやってみてはどうでしょうか。

    すんなりスピンサーブができる人もいますので(私は苦手でした)、繰り返しになりますが個人の資質に大きく左右されます。

    スピンサーブが打てるに越したことはないでしょう。

    エドバーグ、ベッカー、マッケンロー・・・全員、まねするにはむずかし目のフォームですね。

    レンドルなんかは結構真似しやすいと思います。あのグリップが「パワーグリップ」なのかな・・・。

    ジョコビッチなどはいいサーブは打っていますが、一般人がまねしない方がいい典型的なフォームに思えますね。
    反ってるし、打った後の腰の折れ方などオーバーアクションすぎます。

    あとはヒューイットの背中見せっぷり&肘の背中方面への折れっぷりなども気になります。

    フェデラーは力みのないいいフォームなんですが私には合いませんでした。インパクト後にちょっと腰が残っている感じに見えるのが気になるのですが、実効上は問題ないのでしょうね。

    まったく素人のくせに世界のトッププロを斬るなんて何様のつもりなんでしょうね>俺

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  • 私はテニス歴20年以上にしてようやく最近キックサーブ「もどき」が打てるようになりました(笑)。

    今年の全豪4R、フェデラーvsベルディッヒ戦を、ベースライン真横、最前列から5列目で見る機会があり、フェデラーのトスを観察していました。すると驚いたことに、すべてのサーブでトスの位置が同じなのはもちろんですが、それがそれほど前ではなかったのです。ベースラインから大体ボール2個か3個くらいしか前ではありませんでした。1st、2nd、フラット、スライス、キックと、すべてを同じトスで打とうとしたら、自然にその位置になったのかもしれませんね。

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  • Shinさん、コメントありがとうございます。

    そうですか、フェデラーは意外と前じゃないんですね。
    スピンサーブならわかるんですが、フラットもその位置でしたか・・・。
    ただし、その位置でもコート上では20cmくらいは内側に落ちそうです。
    「前で打てば打つほど角度的には有利」というのは間違いないですが、自分に合った打点にしないと意味がありませんからね。
    フェデラーの場合は、ボール2,3個分ラインより前が一番良かったのでしょうね。

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  • プロは個性的な体の使いまわしをしてる人が多く
    フォームだけ真似しても意味がなかったり、真似すら無理だったりするので
    男子はあまり参考にならないですねえ。
    自己満はモチベでもあるので、やめろとはいえないのもまた難しいところですが。

    そんな中でも安心してお勧めできるのはデヴもとい、ダビド・ナルバンディアン。
    高いトスアップ以外、鼻血さまのおすすめの全てに当てはまっているはず。
    足を寄せないならガスケかな?この辺は好みか。

    >>テニス少年さま

    サンプラスは肩甲骨がくっつくくらい肩の稼動域が広いらしいですね。
    そこまでじゃないですが、自分も先天的に肩が柔らかくて体格の割りにスピードが出ます。
    ただし、関節の柔軟性に対しあまりに筋力不足で中学時代にルーズショルダーになりかかりました(汗)

    野球ではプロでもよくあるらしいですね。
    岩隈とかがまさにそれだったそうです。
    似たような人いたらちゃんと肩周りを鍛えるようにしてほしいものです。

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  • フェデは後ろ足を寄せないプラットで打ってるから前過ぎると打ちにくいのでしょう。
    このタイプは「真上に飛ぶように」意識するぐらいがイイそうですよ。
    ナブラッチやイバニセは後ろ足を寄せていましたから結構前でしたね。
    打点を10cmでもいいから前にするとレシーバー側の「体感速度」(という表現が正しいか判りませんが)は上がる訳ですから効果は高いでしょう。
    どーゆーことかというと、1m手前から100kmの車が迫ってきたときと、90cm手前(あるいはそれ以上近くから)から100kmの車が迫ってくるのとでは自分の位置への到達時間が90cmの方が速くて焦るでしょ?レシーバーがそーゆーモンだってンで慣れてしまえばあまり意味がなくなるでしょうから時々同じ様なフォームで微妙に速度を変えるとイイでしょうね。自分がもしMAX220km出せたら平均は185km前後で勝負かけるときに195km~210kmにしたいですね。ナダルがこんな感じでサーブゲームを組み立てている様に感じます。
    実際の自分のサーブは若いときのいい時で140kmほど、ジジィの今は・・・近所の中学生が手で投げるより遅いかもwww

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  • 同じくジジィの私はジャンプして打っているとすぐ足にキてしまうので自然と打点が後ろ気味...。スピードもおっそいです。(汗)
    私、高校生の時(遥か昔)に1度だけしか計ったことないです。あの時、アルミ製ラケットで110km/hくらいでした...。

    今じゃラケットも進化してるので一般人でも全力で打てば150km/h以上の人もゴロゴロいそうですけどね。種さんもたぶん謙遜してるだけでもっと出てるっしょ。w
    今でもスピードガンの信憑性については計り方や誤差で私的には?マークですが...。(AIGの時の有明もボロボロでしたね)

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  • 種さん

    それだ!!
    確かに私、後ろ足寄せるタイプなのでトスが前になります。
    両足広げタイプだと前にするとやりにくいですよね。
    さすが種さんです。

    今回は「入りやすさ」をクローズアップしましたが、打点を前にする効用はおっしゃる通り、リターナーの時間を奪えることですね。

    菜梨さん

    プロの個性は超人的なフィジカルがあってのものですからね。真似が無理なフォーム多いですよね。
    細かいところよりは全体的なタイミングの取り方やエネルギッシュさなどを取り入れると上手くいくことが多いように思います。
    プロはみんな「入るかどうかを気にせずに」打っているような印象があります。そのくらい自然に振っているということなんでしょうね。

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  • こんにちわー。
    >まったく素人のくせに世界のトッププロを斬るなんて何様のつもりなんでしょうね>俺

    そんなことないですよ~。
    みんな(わたしたち)が真似してけがしないようにという
    趣旨なので反発する人はいないでしょぉぉ^^
    井戸端会議でそれくらいの話みんな平気でしますしww

      引用  返信

  • 人、それぞれのフォームや、トスの上げる高さ低さ、など色々あるので、あまり断言しないでほしいです、確かにイバニセビッチ(イワニセビッチ)や、ビート・サンプラスのサーブはすごいですが、
    サーブはスピードだけじゃないんです、いくら速くても入らないと無意味です、スピードよりも
    コース重視の、選手の方が、一般の方にも真似をしやすいと私は思います、例を挙げるならば、
    マイケル・チャン選手が、あげられますが彼のサーブは、たいして速くはなく、serve and volley
    が主流だったテニス界では、異例の存在と思えたそうです、しかし彼や、アンドレアガシのような選手の出現によって今のストローク主体のテニス界になったんです、
    長文失礼しました、あくまで個人論です、断じて荒らす気
    などないです

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。