内山が日本にもたらした大きな勝利!ただの消化試合とは言わせない!(2017デ杯WG1回戦: vs. フランス 3日目レビュー)

 初日に引き続き、3日目も有明に行ってきました。
 2日目のダブルスに敗れたところでチームの勝敗は決していましたので、いわゆる消化試合です。3セットマッチで行われました。

 フランス側は、ガスケに変えてマウ、シモンに変えてエルベールを起用してきました。ここは予想通り。
 ガスケ、シモンを見たいファンは多かったと思いますが、ただでさえデ杯は、ツアーの合間を縫って出場するには体力的に厳しいですからね。

 でも層の非常に厚いフランス。マウやエルベールはフランスでは3周目の選手(モンフィス、ツォンガ、ガスケ、プイユ、シモンといるので)かもしれませんが、他の国なら十分レギュラーを張れるレベル。ATP250以上の試合が年1度の楽天オープンしかな日本のファンにとっては、世界を見ることができる貴重な機会でした。

 結果は西岡がマウに対して1-6,1-1で残念ながらリタイア負けでしたが、ダニエルの発熱により急遽代役で出場した内山が6-4,6-4でエルベールに勝利。見事なプレーで一矢報いてくれました。

2017 Davis Cup World Group
Round 1
Japan vs. France
Rubber 4: Yoshihito Nishioka, 1-6, 1-1, ret., Nicolas Mahut
Rubber 5: Yasutaka Uchiyama, 6-4, 6-4, Pierre-Hughes Herbert

西岡 vs. マウ

 マウ、エルベールはこのペアで世界一位のダブルスペアです。つまり、サーブが強く、ネットプレーが上手い。
 そこまでは想定内でしたが、マウのバックハンドの強打がとんでもなく素晴らしかったです。

 コートエンド側の方がコースがよく分かるので、いつもは好んでコートエンドを取るのですが、今回、久しぶりにコートサイド側から見ました。
 コートサイド側からはボールのスピード感を堪能することができます。
 いやほんと、プロってとんでもないスピードの球を打っているんだなとよく分かります。
 我々アマチュアは、ボールを持ち上げてネット上を高く通さないと深い球を打つことはできませんが、プロはそんなことをしていたらすぐにアウトしてしまいます。
 初日のレビューで「西岡が球を持ち上げて」って書きましたけど、それとてアマチュアではハードヒットレベルですからね。彼らはとんでもないです。

 話がそれましたがマウのバックハンド。まさに「前にしか打ってない」です。前に突っ込みながら打っているようにさえ見えます。高い打点から真っ直ぐハードヒットされた球は、ものすごいスピードでコート深く突き刺さって西岡のバランスを崩します。西岡が必死にくらいついて返しても、すでにネットに詰めたマウが美しくボレー。ああなんとフランス選手達は芸術的なプレーをするのだろう、さすが芸術の国、などと考えてしまいました。

 西岡はどこか元気がありません。思うようなプレーができず苛立ちを隠しきれず。ほとんど見せ場なく1-6で落とし、2ndセットは最初のゲームをキープするも、1-1の場面でリタイア。
 リタイアするほどの故障があったようには見えなかったので、驚いた会場がざわつきます。
 後の報道によると、左手首の痛みで、初日の試合中にすでに痛みがあったとのことでした。

 いつもの西岡の頑張りやテニスにかける情熱、ツアーでの奮闘ぶりは良く知っていますのであまり西岡のことを悪く言いたくはありません。今回も苦渋の決断であったことでしょう。しかし、それまでの3試合でセットはおろか、5ゲームすら取れなかった日本チーム。消化試合とは言え少しでも日本選手の活躍が見たいと思って足を運んだ約1万人のファンはさぞかしがっかりしたことでしょう。私もその一人です。

 かといって、「続行するべきだ」と言うこともできません。まだまだ先が長い西岡の選手としてのキャリアを考えると、どんなに辛い場面でも厳しい決断を降さなければならないことはあります。今回もそうだと思います。

 ただ、「日本が既に惨敗し、一矢報いることを期待された状況で、痛みを抱えた状態のまま出場し、結果として見せ場なくリタイアとなってしまった。」
この結果だけを見たら、100%の擁護をすることはできません。「そのような状態なら、杉田を出すべきだった。」 これは、結果論的ではあるにせよ、誰しも抱く感想でしょう。西岡だけでなくチームとしてどういう経緯の決断だったのか、気になります。
 プロは結果を出して、試合を見せてなんぼの世界ですから、彼もこの点の批判は甘んじて受ける覚悟はあると思います。なにより、西岡のプレーに対して非常に期待していたからこその観客の不満だと思います。
 この試合をバネに、今後のツアーで奮起する西岡に期待したいです。西岡は今週、キャリア杯の82位を達成する見込みです! 目指せトップ50!

内山 vs. エルベール

 日曜日のファンはこういう感じの人が多かったと思います。

錦織を見れるかも! → 錦織不出場表明
でも、ガスケやシモンが出るし! → マウ、エルベールに交代
せめて日本の1勝を → 西岡リタイア
まだダニエルがいる! → 内山に交代

 マウ、エルベール、内山をディスっているわけではありません。
 知名度の点で、どうしても錦織、ガスケ、シモン目当ての人が多かったのは仕方ないと思いますし、ガスケやシモンまでは知っているが、マウ、エルベール、内山は知らないという人も比較的多くいたのではないかと思います、という意味です。

 実際、今回私は観戦初心者の若者を多数引き連れて来ましたが、そういう状況でした。
 でも、試合後は、「なんか日本にもすごい選手がいるんですね! なんで230位なんですか?」 「内山ってどんな選手なんですか?」と内山に興味を持つ人がたくさんいました。間違いなく、大きく知名度を高めたと思います。

 話を内山の試合前に戻しまして、会場がフランスに全く歯が立たない状況に意気消沈していたのは間違いありませんでした。
 そんな雰囲気を払拭してくれたのが内山の大・大・ファインプレーでした。

 サーブでは200km/h超えでエルベールのラケットを弾き、2ndでも強気の160km/h超えを連発。171km/hのスライス系でワイドへ、というすごい2ndまで見られました。
 そして得意のフォアでエルベールを攻め立て、パッシングで鮮やかに抜きます。
 「これで230位?」まさにそんなプレーでした。
 彼のポテンシャルの高さを余すところなく発揮したナイスゲームだったと思います。
 力強くスマッシュを決める姿に、「かっこいい・・・」という声が周囲から聞こえました。
 エルベールはネットプレーで冴えを見せましたが、セカンドサーブに対するリターンミスが多く、終始リズムに乗れませんでしたね。

 内山の大活躍に、勝利に飢えた有明のファンは待ってましたとばかりに狂喜乱舞でした。
 たしかに消化試合です。日本がフランスに負けたという事実は消えない。
 しかし、たかが消化試合でしょうか?私には日本にとって大きい、大きすぎる勝利にしか見えない。
 ガスケ、シモンを温存し、勝利が確定し無理をする必要のないフランスに対しあのまま5連敗していたら、「やっぱり日本は錦織だけのチームだ」と思われたことでしょう。
 それを許さなかった、しかもワールドクラスのプレー内容で被ブレイクなしで勝利した。これは大きいです。
 「何だ? 日本にはこんな選手もいるのか?」
 そういう印象を与えることができたと思います。

 思い起こされるのは2009年3月のデ杯中国戦。錦織が肘の故障で長期離脱する直前の試合です。
 名前は忘れましたが錦織と対戦した中国の若手選手。
 ランキングは無いに等しく、プレーも全く未知数。しかし、敗れはしたものの、ショットの強さがありスケールの大きなテニスに得たいの知れない怖さを感じたものです。
 これが、テニスでは発展途上国ながら大国・中国の恐ろしさか、と。このまま国を挙げて強化していけば、いずれは日本の壁となるのではないかと。
 そういったアピールを世界に向けて声高に宣言するには十分な勝利だったと思います。日本は錦織を中心に、これからまだまだ強くなっていくぞ!!と。

 内山自身にも大きな勝利だったようで、試合後のインタビューでは「テニスをやっていて良かった」と。
 怪我もあり、ランキングは200位台ですがまだまだこれからです。ポテンシャルは非常に高いので、この試合をきっかけにトップ100、グランドスラム出場と羽ばたいて欲しいと思います。
 

161 件のコメント

  • @ryo様
    ベデネが選ばれない理由はそういうことだったんですね。
    単にチーム事情、将来性とか、チームへのなじみ具合とか、が理由だと思っていました。

    例えば、ドイツのダスティン・ブラウンはドイツ代表の以前はジャマイカ代表の経験もあるし、オランダのJJロジェールはオランダ領アンティル諸島(カリブ海の島)で主戦を張っていました。
    今年も、香港代表で出たカラン・ラストギはインド代表の経験もあります。

    FIFAには厳しいルールがあります。年代別代表でも国際試合に出たら、その後は他国の代表にはなれません。
    それが、ITFにもあったんですね。

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  • @デ杯一筋さま
    私も去年不思議に思って調べたんです。

    https://www.theguardian.com/sport/2016/mar/23/aljaz-bedene-davis-cup-great-britain

    理由を記した記事が上記です。2015年に改正されたルールで過去に1カ国以上で他国代表としてデ杯出場経験のある選手は別の国の代表にはなれないそうです。ベデネ選手は2010〜2012年に3回デッドラバーを戦った為に対象外となってしまったそうです(T ^ T)。

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  • お早うございます。
    ROMさま
    ITFルール改正情報有難うございます。2015年に改正で、実績は過去に遡るのは理不尽な気もしますね~。2015年以降適用とはならなかったのかな。
    デ杯一筋さま
    線引きは難しそうですね。以前ご教授頂いた、カザフスタン等がロシアから若手選手(ブブリク選手、ポプコ選手等)を呼び込んで自国を強化、はどういう扱いなんだろうと一瞬よぎりましたが、それは各競技、五輪や世界選手権等でも各国で見られる現象ですしね。

    ロッテルダム情報、というかそのベデネ選手情報です。
    1R、因縁のベデネ選手[Q]vs.イストミン選手[LL]戦は、イストミン選手が6-3、7-6で勝利。ですが、予選決勝ではベデネ選手が7-6、6-3で勝って本戦進出。ゲームカウントまで同じで結果は真逆という、恐ろしいまでの因縁です。

    さてブエノス情報。
    錦織選手、昨日はフェレール選手と練習。動画が公式に上がっていました。
    https://www.facebook.com/ATPbuenosaires250/videos/1319077838135943/
    上半身裸のサービスショットに、フェレール選手の元気なお姿。萌え萌えですね。動く錦織選手、久々に見られて嬉しい限り。調子良さそうです。
    雨天に悩まされ、練習は建物内で。インドアCって何となく不思議な空間です。

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  • @デ杯一筋さん、@ROMさん、ありがとうございます。

    改正されたルールは読んでいません(読めませんorz)が、要は「過去に1カ国以上で他国代表としてデ杯出場経験のある選手は別の国の代表にはなれない」ということですか。
    ベデネ選手は国籍を変更したあとのルール改正で、デ杯出場の道が閉ざされてしまったわけですね。なんか気の毒です・・・。せめてイギリス国籍取得後●年経てば出場OKとか、救済制度があればいいのに(>_<)

    あれ?カラン・ラストギ選手は今年香港代表として出場したんですか?なんで出れるの~^^;?インド代表のときは代表入りしたけど試合には出なかったとかが理由ですか?

    @NORICHANさん、
    私も同感ですね。過去に遡られたら手の打ちようがないです。
    ロッテルダム情報もありがとうございます。結果はイストミン選手のリベンジですか。これまたベデネ選手はお気の毒でございますな~^^;

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  • @NORICHAN様
    輸入選手で揉めたと言えば、アメリカからロシアに移ったAlex Bogomolov, Jr. フロリダ育ちなのに、将来有望とロシアから誘われて(それも元をたどればロシア移民という強引な理由)、さんざん目を掛けてくれたUSTAともほとんどけんか別れ状態で移籍。
    デ杯代表にも選ばれましたが、結局鳴かず飛ばずで引退しちゃいました。

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  • 今日は。
    すぅーさま
    ベデネ選手、そうなんです。予選で勝った相手に、初戦相手に復帰されて負ける…。お笑いで言う上げて落とす的な。こういうの踏んだり蹴ったり? いえ踏まれたり蹴られたりですよね~。

    デ杯一筋さま
    アレックス・ボゴモロフJr.選手! 錦織選手、右ひじ復帰後の21,2歳の頃よく対戦していましたよね。ここ2,3年聞かないなあとは思っていたのですが、そうですか、引退していましたか…。戦績や、体力の限界等ではない外野事情に翻弄されて引退に追い込まれた感が。悲喜こもごもですね、引退も。

    眼の手術を受けたガバ主審の、更にその後です。
    <デビスカップで眼にボールをぶつけられた審判、手術は成功>
    http://www.thetennisdaily.jp/news_detail.asp?idx=122008
    とにかく大事に至らなくて良かったです。
    忘れがちですが、審判にもスケジュールがありますね。これから500数大会やMS2大会を控え、彼の穴を埋めるために、ゴールド・クラスの審判スケジュールをゴロンと見直さなければなりません。
    シャポバロフ選手、そのつもりはなかったとはいえ件の影響は大きいです。

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  • ベデネvsイストミン、第2セットだけテニスTVで観ました。
    ベデネ選手はフォームがきれいで、リターンも精度が高く、いいプレーをしていたように見えましたが、最後はイストミン選手が力で押し切りました。

    ブエノスアイレスの錦織選手、初戦は水曜日ですかね。待ち遠しいです。NORICHANさん、練習動画のご紹介ありがとうございます。
    ロッテルダムでは、コールシュライバーvsプイユ(たぶん初対戦)が楽しみです。

      引用  返信

  • @すぅー様
    カラン・ラストギ、インドがまだWGにいた頃にデッド・ラバーですが試合に出場しています。その時はティプに粉砕されていますが。その他、インドの一員として他の何試合かにも出場しています。

    ラストギのいる香港のように地域ゾーン2と、ベデネのイギリスのようなWGのチームでは扱いが違うのでしょうか?

    デ杯のレギュレーション、例えば会場設備などでも、要求される細かさが違いますから。

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  • @デ杯一筋 さん、

    おぉぉ~なるほど、WGと地域ゾーンでは制約が異なるのかもしれませんね。そうでないとラストギ選手が香港代表で出場できた説明がつきません^_^

      引用  返信

  • 今日は。
    待ってました!
    内田暁さん、Web Sportivaにコラム掲載です。そのタイトルにさえ、ぶるるっ。
    <ラオニッチ、錦織、ディミトロフ。「ビッグ4超え」は彼らの使命である>
    https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/tennis/2017/02/14/___split_5/index.php
    フェアリー・テールのようなAO決勝戦。それを実現させた立役者のようになった3選手。いいえ、近々に必ずこの3選手がおとぎ話を終結させます。そして彼らの武勇伝が始まるはずです。

    イストミン選手の崖っぷちからの生還、海外でも相当話題のようです。代表でBBCより。
    <Aljaz Bedene knocked out of Rotterdam Open by Denis Istomin>
    http://www.bbc.com/sport/tennis/38964115
    これこそフェアリー・テールですね。抄訳が出ればまたご紹介いたします。

      引用  返信

  • こんにちは

    錦織選手の初戦、待ち遠しいですね。
    今日のナイトゲームの面子がトップハーフに集中してますので、初戦は木曜日になりそうな気がするのですがどうなりますでしょうか。

    できれば水曜日がいいなぁ。

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。